文化村ミュージアムで開催されている「印象派への旅 バレル・コレクション」を観た。印象派中心の企画展ということで前から観たいと思っていたのだが、チェックすると6月30日までということで急遽行くことにした。パナソニック汐留美術館でやっているギュスターブ・モロー展も6月23日までと会期が迫っているので、ハシゴするつもりだ。
休みに都内で美術館巡りというともれなくカミさんが着いてくる。さらに今回は子どもも一緒ということで車で都内へ繰り出す。駐車場は文化村の隣にある東急本店の駐車場に入れる。
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_burrell/#point
バレル・コレクションとは19世紀後半から20世紀にかけてスコットランド、グラスゴーで海運王の名を馳せた実業家ウィリアム・バレルの美術品コレクションを集めたものだ。印象派を中心にイギリスやオランダの絵画を集めた膨大なコレクションをバレルは故郷グラスゴーに寄贈した。1944年のことだ。そのコレクションはグラスゴーの博物館群に保存されていたが、1983年に専用美術館バレル・コレクションとして開館した。
バレルは寄贈の条件として英国からの不出をあげたということで、この貴重なコレクションはこれまで海外に出ることはなかったのだという。2016年に美術館バレル・コレクションが改築のために一時休館(2020年オープン予定)中のため、海外への貸し出しが行われることになり、はるばる日本にやってきた。まあ、貸し出し料金はドガ、ゴッホ、セザンヌ、クールベ、ルノワールなど多岐に渡るだけに、相応の金額となる。美術館としてもこの貸し出し料は無視できないだろう。バレルの遺志よりも運営資金調達ということなのだろうか。
日本では昨年から福岡県立美術館、愛媛県美術館、Bunkamuraザ・ミュージアムと続き、さらに静岡市美術館、広島県立美術館へと持ち回りで開催が予定されている。
さてとその作品なのだが、全体として小品が多いという感じがする。印象派といいながらモネは1点もない。ピサロ、シスレーはそれぞれ1点ずつだ。印象派よりもどちらかといえば、バルビゾン派自然主義やその派生、さらにほぼ同時期の同じ自然主義の影響化にあるオランダやイギリス絵画が中心という印象が強い。
まず冒頭、コレクションのなかでも目玉ともいうべきゴッホの一品が展示されている。
バレルの収集に寄与したグラスゴーの画商である。一時期、ゴッホの弟テオが務めていた画廊で見習いをしていたことがあり、ゴッホ兄弟とは親交があったという。ゴッホが積極的に点描を取り入れた時期の作品でもある。
これまで注意して観なかったのだが、この絵をもやや遠目から観ると視覚混合により味わい深いものとなる。デトロイト美術館所蔵のゴッホの自画像なども同じ表現となっているので、同じ鑑賞をするべきだったかなどと思い出してみた。
次に展示されているのがカミーユ・コローの「耳飾り」という作品。
衣服がはだけた胸元とどことなくエキゾチックな顔立ち。コローにしては妙に官能的な趣がある作品だ。バルビゾン派に先立つ自然主義の作風であるコローにしては、妙にミステリアスで何か意図ある象徴性を帯びた作品のようにも感じる。
そしてゴッホと同じく目玉的作品でもあるドガの「リハーサル」。
構図、画面構成などが秀逸と解説されているが、何かいつものドガ、いつもの踊り子たちという感じだ。なんていうのだろう、ドガの踊り子たちを見つめる視線が、どことなく冷たいもののように感じられてしまうからか、自分にはドガのこの手の絵に感情移入できないところがある。
そしてこの企画展でもっとも気に入ったのはこのクールベの作品である。
これがクールべ?とつい思ってしまうような作品だ。写実性よりもなにか新古典主義の作品という感じさえする。シャセリオーやブグローのような趣がある。
その他ではブーダンの作品が数点展示されていた。その中にはいつもの浜辺の景色や船を描いた海景画あり、さらにそれらとは異なる洗濯女たちを描いた作品などもあり、ブーダンの意外な一面をみたような気がした。同じモチーフをゴッホが取り上げているだけに、多分ゴッホはブーダンの絵を観ているんだろうと想像して楽しくなった。