ラファエル前派の軌跡展

 会議が割と早めに終了。その後の打ち合わせも早々に片づけて、お付き合いも断って絵を観に行くことにした。場所的には竹橋のMOMATに行くか三菱一号館に行くかという感じ。数分思案したうえで三菱に行くことにした。

ラファエル前派の軌跡展|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

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 ラファエル前派展は以前、六本木の森アーツ美術館で開催されていたのに行ったことがある。確かロンドン、テート美術館所蔵作品を中心とした企画展だった。

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tomzt.hatenablog.com

 この企画展はラファエル前派の代表作ともいえるミレイの「オフェーリア」を含む大々的なもので、ある意味ラファエル前派を一望できるものだった。

 そして今回はというと、ラファエル前派を支える理論的、精神的支柱でもあった美術批評家ジョン・ラスキンをメインに据えた企画展。画家ではなく批評家を持ってくるというところが新機軸といえばそうなんでしょう。まあラスキンは素描家でもあったので、スケッチなど小品が多数展示されていた。

 とはいえ下世話な理解でいえば、ラスキンといえばミレーにカミさん寝取られる(エフィー・グレイだったか)。のちにホイッスラーに名誉棄損で訴えられ敗訴するなど、けっこうスキャンダラスな部分もあったという美術批評の大家でもある訳だ。

 まあ美術展は画家がメインであるべきみたいな保守的な考えもあるので、できればそういうオーソドックスな切り口でもよかったのではと思わない部分もある。そしてラファエル前派といえばジョン・エヴァレット・ミレイとダンテ・ゲイブリエル・ロセッティがツートップである。

 今回の企画展ではミレイの作品は素描を含めて小品が4~5点あるだけで、ロセッティ、ハント、エドワード・バーン・ジョーンズなどの大き目の作品が多数展示されていた。結論的にいうと、ロセッティが全部持っていった感が強かった。

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 ミレイはというとこんな感じね。

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 個人的にはミレイの画力、タッチとかに魅かれる部分が多いので、今回はなんとなく物足らなさを感じた。そしてとにかくロセッティはインパクトが凄すぎる。とにかく後に残る印象も半端なく強いから。

 あとラファエル前派っていうのは、モデルが美人揃いで、しかもその名前が美術史に残っている。19世紀中葉、モデルに初めてスポットライトが当たった時代でもある。しかも画家とモデルの関係も注目されるようになった。

 それまではというと、下世話な話でいえば画家とモデルの色恋などざらにはあったとしても、それが取り上げられることなんてなかった。そこいくとラファエル前派はけっこうスキャンダラスに感じ。

 前述したようにラスキンとミレイの間のエフィー・グレイ。ミレイとロセッティの間でリジーことエレノア・シダル。ロセッティとハントを翻弄するアニー・ミラー。ロセッティとエドワード・バーン・ジョーンズとロセッティとファニー・コンフォース。そしてもっとも有名なのがウィリアム・モリスとロセッティの妻ジェイン・バーデンの奇妙な三角形などなど。

 時代的にはヴィクトリアニズムのモラル重視の時代だというのに、この乱交関係って何なんだろう。思うに、多分美人揃いのモデルたちは大衆にとってもグラビアアイドル的に消費され始めたのかもしれない。彼女たちが今風の女優さんのような存在だとすれば、画家はある意味映画監督とか著名写真家みたいな存在でもある。ロセッティのような見るからにイケメンで詩人でもあり画才に優れたスターは、アイドルタレント=モデルと浮名を流すのは当然なのかもしれないし、それを含めて熱狂を受けたのかもしれない。まあ下世話な人間の勝手な想像です。