東京都美術館で開催されている「THE GREATS スコットランド国立美術館 美の巨匠たち」を観てきた。
スコットランド国立美術館が、ルネサンス期から印象派あたりまでの名品を収蔵する美術館であることは、なんとなく知っていた。そしてゴーギャンの「説教のあとの幻影」を持っていることなども。概説書などを見て、この絵がスコットランドにあるというのが、ちょっと意外に思ったりもした。
今回の企画展は、この美術館の所蔵品約90点を展示した大掛かりなものだ。展示作品はルネサンスから新印象派までを網羅している。東京都美術館にしては奇をてらうことのない、割とオーソドックスな展覧会だ。内容的には、六本木の国立新美術館で開催されたメトロポリタン美術館展と似たような感じがあった。
スコットランドという性格から、イギリスの風景画、肖像画も多数出展されているが、目玉的にはエル・グレコ、レンブラント、ベラスケス、レノルズなど。19世紀の印象派系ではモネ、ルノワール、ゴーガンなども。
まずはポスターにも使用されている目玉作品。
貴族社会の年子の三姉妹を描いた作品で、ギリシア・ローマ神話に登場する「三美神」を暗示しているとされる。
ギリシア神話に登場する三美神で魅力(charm)、美貌(beauty)、創造力(creativity)を司っている。一般的にはヘーシオドスの挙げるカリスのアグライアー、エウプロシュネー、タレイアとされる。パーシテアー、カレー、エウプロシュネーの3柱を三美神とする説もある。
また、パリスの審判に登場する美しさを競うヘーラー、アテーナー、アプロディーテーも指すことがあり、それぞれに権勢、知恵、美貌を象徴する。
ローマ神話に登場する三美神で、それぞれ愛(amor)、慎み(castitas)、美(pulchritude)を司っている。ギリシア神話の美しさを競う三美神と対応させて、主にユーノー、ミネルウァ、ウェヌスの三美神が有名。
レノルズ(1723-1792)はロココ期のイギリスを代表する画家。イタリア美術の「荘厳様式(グランドマナー)」を用いた肖像画で有名。イギリスのロイヤル・アカデミーの初代院長を務める。代表作はファンシー・ピクチャーとして有名な「マスター・ヘア」など。
本作では白いモスリンのドレスの表現、ドレスに劣らぬ美しい白い肌、頬紅の赤、sっして凝った髪型などが特徴的。完璧な構図と完璧なJ表現、同じ服装、同じ髪型ながら、姉妹の性格的な部分も描き分けられているように思う。
図録によれば、二人の若い女性は娼婦、左の年かさの女性は娼館の女中もしくは女将であるという。古代ギリシア・ローマの理想美とは異なる肉感的な女性像。ヴォルドネはティツィアーノのもとで訓練を受けたと図録にあるが、この肉感的な表現はまさにティツィアーノ風。特に女性のたくましい二の腕にそれを感じる。
ラファエル前派のロセッティたちがが手本としたのは、こうした作品なのではないかと思ったりもする。
聖書の中の物語、結婚初夜、新郎トピアが悪魔を追い払うのを見守る新婦サラを描いている。サラは以前の夫7人が新婚初夜に悪魔に殺されている。モデルとなった女性は、妻のサスキア、息子の乳母ヘールチェ・ディルクス、使用人ヘンドリッキエ・ストッフェルスの三人が候補とされている。
傑作だと思う。レンブラントの作品の中でも五指に入るのではと思う。人物、背景を含めた陰影表現、寝具やカテーンの色合いなどすべてが美しい。
フランシス・グラント 1857年
素敵な絵なのだが、極端な小顔。八頭身半くらいあるこの女性は明らかに人体比率的にいうと、パースがおかしいかもしれない。美しく誇張するのは画家の常かもしれないけど。
これも傑作。今回の出品作の中でも五指いや三指に入る名品だと思う。前述したようにスコットランド国立美術館のゴーガン作は「説教のあとの幻影」が有名だが、この作品もそれに劣らぬゴーガンの代表作だと思う。