企画展ロンドン・ナショナル・ギャラリー展を観てから、すいれんで昼食をとる。それから西洋美術館の常設展を観た。ある意味ここが自分にとってはベースのような場所でもある。
もともと淡路島に健保が契約するホテルがあり、そこに年に1度くらいは行くようになった。そこからほど近い鳴門の大塚国際美術館に通うようになり、そこにある西洋の名画の陶板複製画に魅了されて西洋美術を鑑賞するようになった。
その後はこの西洋美術館、箱根のポーラ美術館、八王子の東京富士美術館を順繰りに訪れている。このへんがまさにツボというか、自分のベースの場所だ。そして毎年、各地の美術館で開かれる海外美術館の企画展で来日した名画を観る。
大塚国際美術館の初代館長である大塚正士は、「この美術館で複製画を観て、いつか海外に行きオリジナルに触れていただければ」というような言葉を残している。その言葉に導かれるようにして、海外にこそ行けていないが来日した名画オリジナルに親しみ、国内の主要な美術館周遊を続けている。
コロナ禍で多くの美術館が開館を自粛していた。なので月に数回は訪れていた美術館巡りも当然お休みしていたのだが、その再開にあたってはやはりベースとなる西洋美術館に来る。なんとなく個人的感慨としては、やっとここに戻ってきたというような心持もある。
西洋美術館の常設展は本当にいつもの展示作品たちである。その中では初めて目にする新収蔵品たちになんとなく目がいくことになる。
ブーグローの板絵である。白地に色鮮やかなに描かれている。展示された回廊には以前同じ画家の『音楽』が展示されていたのを記憶している。
ロセッティは隣に以前からの『愛の盃』が展示されている。堂々としてインパクト溢れるラファエル前派の二枚看板の1人であもある。しかしこの人もまた美人像に対する強烈なイメージがあり、誰を描いても同じ感じになるような気がしてならない。もっともだいたいいつも同じモデルを使っていたという部分もあるのかもしれないけど。
ドニのこの作品は初めてみた。色使いや雰囲気はドニそのものだけど、題材とかがちょっといつもとは違う感じがする。
これも初めて観る絵。リュシアン・シモンはポスト印象派の1人と称されることが多いけど、絵の雰囲気は印象派そのものという感じがする。
イギリス風景画の神髄を見るような感じ。この画家のことはまったくわからないけど、18世紀後半から19世紀中葉にかけて活躍した画家だとか。凡庸かもしれないが、構図、表現ともに申し分ない。
その他気になった作品を幾つか。
18世紀に活躍した新古典主義の女流画家。この1枚の絵からも画力の人だったことがうかがえる。ロイヤル・アカデミーの会員にも加わっていたという。残された自画像からはたいへんな美人であったことも美貌と才能に恵まれ、絵画の世界でも成功を収めた人だったらしい。
そのほかではいつも観ている作品だけど、マルケやヴァン・ドンゲンの作品に心落ち着かせるものを感じる。なんか西洋美術館でこういう絵に触れていると、確かに日常が戻ってきたように実感する。