抜歯する

 一週間ぶりに歯医者に行く。左下の4番と6番の間に横に生えた歯が、虫歯になるし、ずっと舌に触れているような感じで、無益なまま40年付き合ってきたのだが、いよいよこれを抜くこにした。元々、今通っている歯医者もこの歯を抜くために行くことにした。地元の歯医者でこの歯はいずれ抜かなくてはなりませんと言われていたのだが、その歯医者では抜くのが難しいということで、大学病院で抜歯するようにと紹介状までもらったいわくつきの歯なのである。
 抜歯をするのは多分30年ぶりくらいのことである。ただでさえ痛みに弱い人間なので、けっこう緊張していた。そりゃそうだろう、大学病院クラスの難しい抜歯だというのだから。とはいえ実際はというと、痛い痛い麻酔はあったものの、後は割とあっけないくらいに簡単に抜けた。医師の「もう抜けました」という言葉になんか唖然とするような感じ。せっかくなので記念という訳でもないが抜いた歯をもらってきた。けっこうでかい、細長い立派な歯である。還暦過ぎて自然に抜けるでもなく、こういう立派な歯を抜いていいのかという気もするが、まったく役にたたない歯なのでまあこれは仕方ない。
 もっと時間がかかる大施術と思っていたのだが、1時間もかからずに終わったので、さてとこの後どうするか、いつものように絵を観に行くかと思った。池袋からだと山手線で一本で上野に行けるし、金曜日なので8時までやっているので、西洋美術館へ行くかとも考えたが、せっかく都内に出てきているので、六本木国立新美術館で14日から始まったばかりのビュールレ・コレクション展に行くことにする。今週は2回目の六本木である。鶴ヶ島なんぞに引っ越してからはこういうのは本当に久しぶりのことかもしれない。