西洋美術館と構図の基本のキ

 国立博物館を6時頃に引けてから、上野公園の噴水前広場で屋台村が出ていたので、そこで佐世保バーガーで腹ごなし。もう遅い時間だったので、半額で売っていたので食す。通常価格800円は値段なりの美味しさで結構なお得感があった。
 その後は上野のホームポジションである西洋美術館に行く。7時からの観覧だが、夜9時までなので2時間を常設展で過ごすのはちょうどいい時間である。企画展はアルチンボルド展だが、すでに2回観ているし、野菜や果物の寄せ絵は正直一回観ればいいだろうという感じ。
 今回はというと、今少しずつかじっている構図を意識して絵を観ることにする。構図についてはぶっちゃけ門外漢。要は絵画を描くとかはまるきしだし、観る方も正直、「いいな」とか「きれい」といった感覚的な部分の吐露、表白ばっかりで、なぜ「いいか」、なぜ「美しいか」といった点には無頓着。美術についてのお勉強なんてまったくしていないのだから、しょうがないといえばその通り。
 なので最近は絵画入門みたいな本を数冊読んではいるのだが、だいたいが画家論や美術史についてが中心で、絵の技法的なものは手に取ったことがない。まあ実際に描く訳ではないので、やはり技法論はちょっと手控えたくなる。
 なので本当に初歩の初歩、基本のキのところで、感じ入ったものをいくつか。

<「哲学者クラテース」(フセぺ・デ・リベラ)>

 17世紀バロック期のスペインの画家リベラの作品。左右対称のシンメトリー型の構図。最も安定した構図で、威厳や神聖さや権威、伝統性や保守性を表している。確かに哲学者の荘厳な威厳をカンバスから滲み出しているようだ。

<「あひるの子」(ジョン・エヴァレット・ミレイ)>

 西洋美術館所蔵絵画の中でもかなり好きな絵の一つだ。少女の視線の鋭さが何か心を揺さぶるような感じでつい魅入ってしまう。
 作者はラファエル前派を主導したジョン・エヴァレット・ミレイ。ラファエル前派は象徴主義や物語性の強い絵を描くことで知られている。この絵もタイトルにあるようにみすぼらしいが、容姿は美しく、いずれは白鳥となることを暗示させるような少女を描いている。とはいえ足元に配置されたあひるの絵は、主人公を装飾する衛星型の構図としてはあまり機能しているかといえば、少し微妙である。
 少女の立像は完全なるシンメトリー型。直立し真っ直ぐ前を見つめる少女は意思の強さ、気高さを表している。この少女の目力は現在の貧困という逆境の中でも毅然とした意思を表出し
ている。このシンメトリーは心を揺さぶるものを観る者に与える。

<「母と子(フェドー夫人と子供たち)」(カロリュス=デュラン)>

 見事な三角形。そして片流れの右受けの構図で、安定感を表している。母の大きな存在と母を信頼し甘える子どもたち。親子の親密さが見事に表現されている。

<「ポントワーズの橋と堰」(ポール・セザンヌ)>

 風景画の遠近表現の一つである囲い込み型。落ち着きと和み感を表出させる。と同時に近景、中景、遠景へと広がりを感じさせる構図となっている。