MOMAT再訪

 多分、今年3回目になるか。今回は妻を連れてとなる。まあ妻と一緒に出かけるということでいうと、美術館に行くのはかなり楽な方だ。ずっと車椅子を押してということもなく、妻は妻のペースで鑑賞できる。音声ガイドを渡しておけばゆっくり、じっくり観て回っている。
 ということでいつもの常設展示4Fへ。
 いきなり大好きな小倉遊亀の浴女である。
 
 「浴女その一」と「浴女その二」
 透明感がありエロチックな雰囲気が全くない裸婦像。俯瞰と側面からの二つの視点一体化させた不思議な構図。湯船でゆらめいて歪んで見えるタイル。不思議な感覚を内包する絵だ。さらに言えばこの絵の美しさは、単純な幾何学模様となっているタイルの線の美しさだ。それとは対照的に女性を描く細い柔らかな曲線。日本画を元になっているのはこの美しくもどこまでも繊細な細い線にあるのかもしれない。
 対となっている脱衣所を描いた「浴女その二」は女性の着物の細かい幾何学的な文様がその一の大きなタイルの線と対照的担っている。
 小倉遊亀は女性画家としては上村松園の次ぐ大家で、105歳まで生きたたいへん長命な画家である。出身地の滋賀県立美術館には50点以上の作品が収蔵されているという。毎年、淡路やら京都やら関西方面に行くことも多いので、近い時期に行ってみようかとも思うが、改装中でリニューアルするのは2年後とのこと。
 同じ4階の西洋絵画コーナーにあるブラック、ピカソマチスという黄金トリオが展示されている。

 雰囲気的には巨人ピカソが両側にブラック、マチスを従えてという風にも思えるが、どうしてどうして両側の巨人たちもけっこう主張している。ブラックの「女のトルソ」はキュビズムでありながら、どことなく叙情性、リリシズムを感じさせる。そしてマチスはいつもマチスだ。
 さらにその横にはドリッピングやポーリングに走る以前、ピカソの影響下ど真ん中のジャクソン・ポロックが展示されている。以前から、ポロックの絵が収蔵されているという話は聞いていたのは、多分初めてのことだ。

 ピカソが先に総てやってしまったと呟いたと伝えられる、ピカソのフォロワーポロックの嘆きが聞こえてきそうな作品でもある。あるいはピカソ風の習作的な。
 その他では藤田の戦争画サイパン島同胞臣節を全うす」は初めて観た。「アッツ島玉砕」は何度も観ているが、これは全く初見である。米軍の進行の中、男たちが抵抗する間に次々と断崖から絶望的に投身する女たち、子どもたち。勇ましい、国民を鼓舞することを目的とした戦争画にあって天才藤田が描いたのは、戦争の悲惨さという本質的な部分だ。正視に耐えないような陰惨な情景である。丸木位里は藤田の戦争画に影響されてあの原爆絵を描いたのではないかと密かに思えるような感じさえする。