ブリューゲル「バベルの塔」展

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 盛んに宣伝もされるので終わる前に一度行ってみようかと思っていた。
 午後、都内で二つ会議が続いていたが、6時頃に終わったので久々上野に足を運ぶことにした。
 東京都美術館はユニークながら、けっこう期待を良くも悪くも裏切ってくれる企画展やってくれるところなんで、今回もどうかなという気もしないでもなかった。モネで「印象日の出」を売りにした回顧展やって、目玉が会期の半分しか展示しないとか笑えないよね。しかもちょうど展示が終わった数日後に行った日には。

 今回もブリューゲル最高傑作「バベルの塔」というあざとい売り込みに少々引く部分もあった。しかし週末の金曜とはいえかなり混んでいる。ブリューゲルエッチングになぜこんな列が出来るというくらいにである。そしてお目当の「バベルの塔」に至っては、ワンフロア(3Fだったか)丸々使ってこの絵だけを展示。映像による解説とか色々やってくれてはいるのだが、この絵1枚でワンフロアはいくらなんでもという気もしないでもない。

 ブリューゲルの位置づけはといえば、ネーデルランドだから広義でいえばオランダ絵画、そして庶民の生活を画いた風俗画の祖みたいなイメージがある。世紀の大画家みたいな持ち上げ型はちょっとなという部分も。
 それでは「バベルの塔」はというと、意外なほど小ぶりな絵である。精密描写でいろんな発見があったりするのはご愛嬌。そういう楽しみ方をする面白絵画なんじゃないかと思ったりもする。聖書を題材にして観るものを楽しませる、仕掛け絵みたいなものか。建造中のため煉瓦を上へ、上へと釣り上げていたり、何百年もかけた建造物を想起させるため、低い階層と上層とでは建築様式が違ってたりとか、本当にいろんな仕掛けがほどかされてる。
 イメージとしてはそうだな、「輪切り図鑑」とか「ウォーリーを探せ」みたいな感じか。世紀の傑作をそんなものと比べて不見識と言われちゃばそれまでだけど。
 ブリューゲルバベルの塔」と共に目玉なのがヒエロニムス・ボスの2枚。「放浪者」と「聖クリストフォロス」。いずれも宗教に着想を得ているが風俗画である。純然たる風俗画である。畢竟の対策ではないし、ユーモラスな絵である。
 ボスはというと小悪魔、怪物が跋扈する寓意に満ちた気味の悪い絵で有名だ。15世紀になぜこれがと思わせるほどシュールである。それらの大作、三連祭壇画は、主にスペインのプラド美術館にあるという。もともと多くの絵が紛失している中で、現存する真筆オリジナルは30枚ほどしか現存しないという。そのうち10数点をプラド美術館が収蔵しているらしいのだが、その理由はスペイン国王フェリペ二世が熱心なボスのファンだったことによるとか(このへんウィキペディア)。
 15~16世紀にあって、あの悪趣味なボスの絵を好むとかって、多分フェリペ二世、碌なやつじゃなかったんではと思ったりもする。
 ボスの絵は二枚だけなのだが、ボスの工房によるもの、ボス風、ボスの模写といった版画が多数展示されており、またそれを模写したブリューゲルエッチングも多数あり、この辺はとても楽しめた。まあ揃いも揃って、魑魅魍魎系のオンパレードなんである。
 ボスやボス風の小怪物が描かれたその手の版画を観ていて思ったのは、一つには「鳥獣戯画」であり、一つは水木しげるの妖怪たちだ。「鳥獣戯画」は12-13世紀の作といわれているが、動物を擬人化したそれは、ボスの人間を小怪物化させたものとけっこう似ているのではないかと思ったりもする。水木しげるの妖怪たちは、明らかにボスのそれを一部参考にしているんじゃないかと思えないところがある。博識の水木は、どこかでボスの絵を観て、それを面白がったんじゃないかと勝手に想像している。
 しかしいずれにしろ、この企画展は宣伝の成功のせいだろうけど、混みすぎではないかと思ったりもしないでもない。閉館間際だというのに、「バベルの塔」の前は列を成し、案内係が立ち止まらないで下さいと声をあげる。正直、興ざめな部分もある。そこまでして観たい代物かよとちょっと突っ込み入れたくもなる。
 ブリューゲルの真筆だったら、国立西洋美術館でも東京富士美術館でも観ることができるはずだ。東京富士のは息子の模写だったか。まあいい。余裕があれば行ってもいいレベルの展覧会かなとも思う。