「東京原発」オフィシャルサイト
東京原発 - Wikipedia
前からずっと気になっていた映画なのだが、ようやっと観ることができた。いやー、面白い。それ以上に日本の原発に内在する問題点を見事に描き出していることに感服。2004年の作品だということだが、まるでフクシマ以後、まさしく本当に最近になって作られた映画であるかのような予見性に満ちている。
レビューとしてはこのサイトが一番的確。
http://homepage3.nifty.com/cine-graffiti/new_picture/2004/041002TokyoGenpatsu.htm
さらに関連ではこのサイトが一押しである。
映画『東京原発』ーー日本原子力発電の闇に切り込む: ロンドンSW19から
しかし東京に原発誘致をという発想がありがちなアイロニーでありながら面白い。よく原発推進派に対して、いいそうなセリフである。原発がなくなれば日本経済が成立しない、大停電になり都市生活が破綻する。なら大都市に原発がどうしてないのか。絶対安全なら一番電力を消費する大都市に原発があってしかるべきではないかい。現に火力発電所は首都圏に隣接した湾岸地域にいくらでもあるだろうに。
映画では原発誘致の理由が、東京の財政難を一気に解消する手立てとなるためと説明される。電力三法により原発立地自治体には手厚い補償やら、様々な交付金に落ちてくる。ついでに雇用もね。そういや最近見た報道番組によると、いまだ本格稼動にいたっていない、というか多分稼動しないに決まっている再処理工場が誘致された六ヶ所村の平均所得は1千万を超えるのだそうだ。原発立地自治体となると1千万プレイヤーが続出するわけだね。
東京に原発なんて誘致できるわけないじゃないか、大きな反対運動がおきますよと反対されると、誘致を主張する都知事は、それじゃそいつらに言ってやれ。
「おまえたちはつかうな」
今まさに、フクシマ以後の議論の中で、原発推進派、維持派が声高に語っているのは、この論法である。
そういえば昨日のNHKの特番だったっけ、NHK スペシャル シリーズ原発危機 第3回 「徹底討論 どうする原発」をダビングしていたので、映画観た後で見てみたのだけど、よりいっそう興味深く見ることができたかな。原発推進派だという北大の先生だという奈良林直の言っているトンデモ話が、話し方はソフトだけども、ほとんど映画の中で都知事役の役所広司が言っていることとけっこうシンクロしていて笑えた。この奈良林という人、フクシマの後にも頻繁にテレビ出演していて、確か「塩の経口致死量200グラム」と「プルトニウムの経口致死量32グラム」と比べて、「塩と大差ないんです」と解説した信じがたい人でもある。
この先生は原子力の専門家のはずなのに、なぜかさかんに日本をジェット機にたとえて、それを支える54基の原発がエンジンであり、それが止まれば墜落する墜落すると危機を煽っていた。でもね、原子力の専門家の話としてはあまりにもそれ飛躍も甚だしいと私なんぞは思ったりもした。まあいい、この番組のことはね。しょせんNHKの番組だから。でも、国営放送たるNHKでも、原発推進派に有利になるような番組ができないほどに、世論の方向性が変わってきていること。現政権がブレつつも軸足をシフトしていることの影響とかも出てきているのかなと感じられるような番組だったとは思う。
まあいい、「東京原発」の話だ。このかなりインパクトある映画はほとんど一般公開されることもなく、ほとんどお蔵入り寸前の状態だったという。しかもこれ以降監督の山川元は一本も作品撮っていないという。これってなんだか以前にも同じようなことなかったか。
私なんぞは邦画の中では常にベストワンと思っているくらい評価しているゴジこと長谷川和彦監督の「太陽を盗んだ男」も同じような顛末をたどったように思う。当時大スターだったジュリーこと沢田研二と菅原文太を配し、核燃料を奪って一人で原爆を作り上げ、国家を脅迫するという孤独なテロリストを描いた娯楽作品。これが興行的に失敗し、それ以降長谷川監督は一本も映画を撮ることなく今日まで来ている。
今思うにこれは、電力会社の陰謀だったんじゃないか。一大スポンサーとしてマスコミに大きな力を持つ彼らは、原発に対してネガティブな世論形成に与する可能性のあるこの映画を闇に葬るべく。なんらかの影響力を行使し続けてきたんじゃないかと。そして同じことをこの「東京原発」に対してもしているのではないかと、まあそんな想像すらしてしまった。
とにかく3.11フクシマ以後の現在にあって、原発の負の部分を理解するうえでとても好ましい映画だと思う。私もそうしたのだが、TSUTAYAとかで普通にレンタルできるので、多くの方に観て貰いたい映画だと思う。出来ればだよ、テレビで普通に放映してくれればいいと思う。このご時勢である。絶対にそこそこの視聴率稼げると私は思う。電力会社のスポンサードに配慮しなければならないって。東電なんか、今に賠償金の問題で、マスコミへのばら撒きなんて多分難しくなってくるはずなんだから。やるなら今だと思うのだが。
出演は役所広司、段田安則。平田満、田山涼成、菅原大吉、岸部一徳、吉田日出子。彼らの演技合戦観ているだけでけっこう小気味良く楽しめる。まあそういう映画だ。後半のプルトニウム積載トラックがジャックされての展開は漫画的というか、いささか軽いというか、前半の会議室での室内劇に比べるといま一つの感もないではないが、それでも余りあるものがある。
この映画を地上波でぜひ観たいと思う。原発問題を世に問うということでいえばだよ、出来れば「チャイナ・シンドローム」「太陽を盗んだ男」「東京原発」あたりを三夜連続放映するくらいの気概のある放送局はないのだろうか。