電力権益脈々

朝日新聞が27日から開始した連載記事「電力の選択」の1回目として1面に載った記事である。「再生可能エネルギー特別措置法案」に執念を燃やす菅首相の真意がどこにあるか、その菅に対するパッシング、反菅キャンペーンの深層は?そのへんを掘り下げた記事でなかなかに読ませる。
今反菅キャンペーンを行っているのは、電力会社、霞ヶ関自民党による「電力権益」体制であると記事は主張している。菅は3.11、原発事故以降「電力改革」「脱原発」にシフトしている。それが既存の「電力権益」体制を刺激したということらしい。
この記事はけっこう評判になっているらしく、Twitter等でも取り上げられている。
Twitter. It's what's happening.
ただしググっても本文記事にヒットしない。「原発推進」、「反原発」と主張に揺れを感じさせる最近の朝日の姿勢そのままに、記事が多方面に影響を与えることへの深謀遠慮みたいなものを感じさせる。最も最近は、記事の有料コンテンツ化が進められているから、きちんと金払ってデジタル版を購読すれば全文読むことは可能なようだ。
http://digital.asahi.com/20110627/pages/
でもとりあえず全文引用してみる。

電力権益脈々自然エネルギー政界泥仕合
与党からも野党からも押し寄せてくる退陣要求を無視して、私たちの国の首相は今、権力の座にしがみついている。
「電力が政治を抱え込む構造を変えないといけないんだ」。6月の週末の昼下がり。菅直人は首相公邸で自然エネルギーを固定価格で買い取って普及を促す「再生可能エネルギー特別措置法案」の意義を訴えていた。
東工大卒の菅は科学好きだが、彼のこだわりはむしろ、自然エネルギーの普及を阻んで地域独占を守ってきた電力会社、霞ヶ関自民党の「電力権益」体制を壊すことにある。「電力権益」側への怨念と首相の座への執着がない交ぜなって彼を高揚させている。
震災前は衝突回避
市民運動から4回目の国政当選で1980円に初当選してまもなく、菅は太平洋に浮かぶ三宅島の風車の上に立った。地上40メートル、東京電力が試験的に設けた2基のプラントは100キロワット級だった。菅は82年、衆院科学技術委員会で初めて質問に立ち、「無限に再利用できる。未来永劫、エネルギー問題に展望が開けてくる」と普及を訴えた。
だが、自民党で頭角を現していた科学技術庁長官の中川一郎は「原子力はいらないという口実に利用する、乗りすぎ、悪乗りのないように」とにべもなかった。自然エネルギーの普及が脱原発論に火をつけることを「電力権益」側は警戒していた。
その後、東電は「三宅島のプラントは採算性がない」と結論を出し、6年余で撤去した。「取り込んでつぶすのが、彼らのやり方だ」。電力会社は「失敗例」をあえてつくって普及の道を閉ざした−菅はのちに周辺にそう解説した。
菅は「脱原発」をうたった社民連から、さきがけ、民主党へと移った。03年総選挙で党代表として自然エネルギーの買取制度を公約に掲げたが、過半数を獲得できなかった。09年総選挙でも公約し、今年3月11日午前、法案の閣議決定にこぎ着けた。
ただ、首相になった後は消費増税への強い意欲とは対照的に、自然エネルギーの普及を看板政策に掲げることもなく、原発輸出も同時に推進した。権力維持のため「電力権益」側との正面衝突を避けたのである。3月11日午後に起きた東日本大震災までは。
事故後一転「改革」
東電福島第一原発の事故が拡大すると、菅は「電力改革のチャンスだ」と周辺に力んだ。5月6日には中部電力浜岡原発の停止を要請。10日には政府のエネルギー計画を「白紙」と明言し、電力会社から送電部門を切り離す「発送電分離」踏み込んだ。26日のG8サミットでは、1千万戸に太陽光パネルを設置する構想を打ち上げた。
その後、「菅降ろし」は勢いを増す。
菅が原発j個対応で海水注入を拒否したという情報が自民党から流れた。経済産業相海江田万里はG8で発表した菅構想を「聞いていない」と発言した。自民党は方針を前倒しして6月1日に内閣不信任案を提出し、民主党小沢一郎も賛成を表明。菅は退陣表明に追い込まれ、「浜岡停止の要請後、東電・経産省連合の巻き返しはすさまじかった」と洩らしたが、それでもなお居座り続け、政界の泥仕合は続いている。

日本で「電力の選択」は長らく主要な政治的対立軸にならず、自民党から民主党への政権交代の過程でも争点にならなかった。
菅が原発事故を機に仕掛けた「電力権益」側との闘いには、政権の延命策、権力闘争の臭いが染みついている。だが、問題は首相の進退や政争の行方ではない。
原発が国策による「大規模・集中型」なら、自然エネルギーは地域や個人も参加する「小規模・分散型」だ。経済成長のために効率の良いエネルギーの確保を追及してきた仕組みを続けるのか、負担増を覚悟して安全を優先した地産地消のエネルギーを重視する社会に作り替えていくのか。それとも二者択一を超えた道はあるのか。政争に明け暮れる政治家たちの思惑を超えて、「電力の選択」は初めて日本社会の大きな論点になった。=敬称略
(村松真次)

菅による中部電力への浜岡原発運転中止要請は、菅が反原発にシフトした象徴的な事象だったのかもしれない。記事にあるとおり、ここから反菅キャンペーンは加速する。自民党経産省を中心とする霞ヶ関、広告主である電力会社の意向にそったマスコミ、彼らを中心とした「菅では駄目」、「菅は無能」というパッシングは勢いを増していく。それは記事が時系列で列挙したとおりだろう。
・菅が原発事故対応で海水注入を拒否したという情報。
これは結果として東電幹部による躊躇と、それを無視して現場では注入が継続したことが明らかになったのではないか。
経産省海江田によるG8での菅による「太陽光パネル1千万戸構想」聞いていない発言。
これはまさしく経産省による菅に対する対抗意思の表明だろう。
・内閣不信任案の提出と民主党小沢派の賛同。
結果として否決され、グダグダになったが、菅は退陣表明せざるを得なくなった。
こうした事実経過を見るにつけ、とりあえず電力改革、反原発にシフトしつつある菅首相の立ち位置を支持すべきなのかなとも思う。今の菅パッシングはあからさま過ぎると私も思う。
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マスコミを離れて見れば見えてくる : 「菅直人を欺く原発推進派の陰謀」という意見 - livedoor Blog(ブログ)
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