スーちゃんが死んだ


http://www.asahi.com/obituaries/update/0421/TKY201104210569.html
田中好子 - Wikipedia
キャンディーズのスーちゃんが死んでしまった。なんかあかんなこういうの。55歳、タメ年ではないか。死んだらあかんよそんなに早くに。
ここ何年かはとにかく訃報記事に敏感になっているのだが、特に同世代の方の訃報を聞くと、どうにもたまらない思いになる。かたやスター、著名人であり、こちらはただの市井の人ではあるけど、とにかく同じ時代を生きてきて、同じ時代の空気の元で過ごしてきた。そういう人たちが、だんだんと逝っていくということを、どう受け止めていいのか。そのへんの気持ちの整理整頓みたいなものができないのだろうね。
いずれ齢を重ねるにつれ、同世代の人の死を普通に受け止めていく。これは順番なんだから、いずれは自分の番がやってくるのだからと。まあそんな心根なんだろうか。
しかしスーちゃんがな〜。キャンディーズ時代から、ある意味真正アイドルみたいな感じだったかな。ぽっちゃりして、目が大きくて、愛くるしい姿。天地真理とかとも通じる部分かな。最近のとにかく細くて、フィギュアのお人形みたいなアイドルとはちょっと異なるタイプだ。
当初はキャンディーズのセンターでメインボーカルだったのだが、あまり目が出ずに、蘭ちゃんとセンターを交代したとたんにブレイクした。そのへんのことをリアルに見てきた世代としていえば、この娘にはなんとなく挫折感とか、ある種複雑な思いや陰りみたいなものもあったのかなとも思う。なまじそういうのとは無縁な愛くるしいルックスだったから、そのへんをどう消化していたのか。
解散後、ソロデビューしてもあまりパッとしなかったが、女優としてどちらかといえば、脇役に回ってからそれなりの存在感を示しだしたことでいえば、そういう挫折感とかうまく消化できたのかもしれないとも思う。容貌とは異なり、内面的にはけっこうタフなタイプだったのかもしれないと思う。30代で癌に罹患しても、きちんと仕事を続けてきたところなんかからもそれが頷けそうだ。
キャンディーズ、懐かしい名前だ。可愛らしい三人組のお嬢さんたちである。当時私が好きだったのはというと、向かって左側がポジションのミキちゃんだったかな。ああいうスレンダーで、ちょっとはにかんだ表情を見せるタイプがストライクゾーンなんだな。
昨日も会社の女の子(といっても40代半ばだけど)とキャンディーズの話をしたときも、自分のタイプはミキちゃんと話すと、相手からたぶんそうだと思いましたと言われた。あんまりそういうことを会社で話すことはないのだけど、わかるものなのかね。
当時的にいえば、キャンディーズの誰が好きかで、男の子の性格がわかるみたいなことってけっこう話題になったと思う。主流は蘭ちゃんかスーちゃん、ミキちゃんは少数派だったか。こういうのはAKB48とかでもきっとあるのだろう、よくわからないが。
最初スーちゃんの訃報に触れて、あれキャンディーズで生きているのは誰と誰みたいな感覚をもった。蘭ちゃんって存命だっけと妻に聞いてみると、怪訝な顔をされ、水谷豊の奥さんであることまで教えてくれた。オジサンそれも初耳でした。
ただ蘭ちゃんがなんとなく若くして死んでいると錯覚しちゃうのは、昔々観た大森一樹監督の「ヒポクラテスたち」という映画のせいだと思う。この映画医学生たちの青春群像を描いているのだが、その中で卒業を前にして突然自殺しちゃう美人医学生を演じていたのが蘭ちゃん。突然画面に現れるにこやかに笑いかけるモノクロの遺影。それにかぶさるナレーションで彼女が突然自殺したことが告げられる。あのシーンがせつなくてね。あれ以来というか、蘭ちゃんにはなんとなく若くして散ってしまう可憐な花みたいなイメージがあったりするわけなのである。
思えば、キャンディーズあたりが、初めて同い年のアイドルということになるのだろうか。中学生から高校にあがる頃までは、だいたいアイドルといえば自分たちよりも年上だった。天地真理小柳ルミ子南沙織。もう少しそれ以前だと岡崎由紀とかそのあたりになるか。
そしてじょじょに自分たちとタメ年のアイドルが出てくる。浅田美代子キャンディーズたち。それからすぐにアイドルはみんな年下になっていく。山口百恵桜田淳子の世代に。そのへんが限界だったかな。大学に入ったあたりから普通にアイドルとか卒業しちゃったからな。
だから松田聖子あたり以降からはあんまり語ることができない。なんとなく同じ世代というか、同じ時代の空気を吸っているという意識が希薄になっていく。仕事し始めて急速にオジサン化しちゃったということなんだろうな。
そういう意味では、キャンディーズあたりまでは、少年的な意識でブラウン管の向こうにいるアイドルへの憧憬みたいなものがあったのだろう。そういうものへの郷愁というか、なんとも甘酸っぱい思いがふとよぎるのである。
スーちゃん、逝くには早すぎる。切ないね。
冥福を祈ります。