日販王子流通センター

久々日販の王子に行ってみた。前に行ったのはいつ頃かと指折ってみたら、なんと15年も前になる。アララ、もはや完全に浦島太郎状態である。ここがどういうところかというと、ようは出版取次最大手の一大物流倉庫なのである。
http://www.nippan.co.jp/shuppan/center/ooji.html
トーハンが桶川に同様の倉庫を作るまでは、高速自動仕分機はここにしかなかった。最初にマルチソーターとかの説明を受けたときには、えらく衝撃を受けたような気もした。
本の物流といえば、スリップという短冊状の注文書をもとに手仕事に次ぐ手仕事で本を仕分け、そのまま手仕事でダンボール詰めしてというのがずっと続いていたから、注文データを元にした計画発注と入荷した注文品のソーター(仕分機)への投入、自動仕分というのは正直恐れ入ったというところだった。
当初は膨大な設備投資により利益を圧迫していたとかという話も聞いていたが、それもほとんど償還したんだろうか、2007年にはさらなる設備投資をして新館も出来たとかとも聞いている。そうそうそれに伴って24時間体制でフル稼働になったともいう。担当者に電話しても、今週は夜勤ですなんていう返事が返ってくることも多くなった。
そんなこんなで今回はまあお付き合いで単なる野次馬的に見学させていただいた。短時間なのであまりいろいろ見ることは出来なかったが、倉庫の棚は以前よりも随分縮小気味である。まあ単純に売れていないということもあるのだろうが、倉庫の稼働率、補充サイクル等データに基づいた結果なのだろう。だんだんと担当者の勘だの、営業とのつきあいだのといった人間臭い部分が入りこむ余地が皆無になりつつあるのだろう。
15年前にはなかったものだが、倉庫商品のピッキングデータが計量化されていて、個人成績化されていた。いやいや厳しい世の中である。速さ、出庫量、正確さといったものが、すべて可視化されている。このへんはたぶんアマゾンとかの影響もあるのだろうと思う。これが3交代で365日フル稼働で行われている。徹底した機械化、効率化。これを一昔前ならば究極の疎外とでもいうところか。
個人的に興味深かったのは、移動式の重検機である。データ化された注文出庫品を棚からピッキングしてこの移動式のワゴンに載せていく。ピッキングが完了して、もし間違いがあると即座にわかる。これは書誌情報にもとずいて登録された本の重量に合算によって照合しているのだとか。
ようは異なる本30冊のピッキングを終了する。もし同じ本を2冊取りしたり、隣の棚から違う本を出したりすれば、その重量の微妙な差から即座にエラー表示するというのである。
以前、トーハンの桶川でも同様の検品機を見たことがある。あそこはベルトコンベアをバケットが流れていき、そこにピッキングした本が載せられていく。最後に計量機を通過して、ピッキングミスがあった場合ははねられるというような仕組みだったように思う。それがよりコンパクトになっているのが日販の重検機のようだ。
ただし出版社的にいえば、裏の裏とでもいうべきものがあったりもする。実は同じ本であっても、刷りによって重さや束が変わることはけっこう普通なのである。端的にいえば、紙がいつも同じものでない場合もある。
「以前使用した紙がたまたま切れてまして、調達に少し時間がかかりそうなんです。少し薄くなりますが、別のでよければすぐに調達します」みたいなやり取りとか。単純に紙質落として原価を下げるとかいったことがけっこう普通にあったりもする。
紙質を変えると当然束や重さが変わったりもするということ。でも、このへんの差はある意味FAというか、オートメーションの世界では許容範囲なのかもしれない。多品種少量販売の出版世界では、例えば抜き打ちで商品の計量とかを行って、重量マスタを更新するとかすれば、それでなんとかなる範囲なのではないかとも思うわけだ。
なにはともあれ業界の浦島太郎的なオッサンにとっては、なんとも「目から鱗」的1日でもあったわけである。