日販、コンビニ配送終了へ

 昨日の朝日新聞の朝刊31面に小さく載っていた記事。

(閲覧:2023年10月28日)

 

 日販がローソンとファミリマートへの配送から撤退するという。これって業界的にはけっこうな激震じゃないか。記事によるとその理由は以下のようだ。

日販が取引をするコンビニ店舗数は現在約3万軒にのぼるが、コンビニ配送での売上高は10年前と比べて約3分の1に縮小していた。運送費の負担が拡大する一方で、雑誌や書籍の返品率は50%を超え、赤字の状況が続いていた。

 売上は約3分の1に縮小し返品率は50%を超える。これでは送れば送るほど赤字になる。雑誌はかっては少年誌などを中心に書店の利幅を確保する優良商品だった。少し前までは雑誌の利益で儲からない書籍のマイナスを補っているというのが、出版流通業界の常だった。

 しかしインターネットの普及により情報性、娯楽性ともに、雑誌コンテンツはネットコンテンツにその役割を奪われ、もはやその売上は壊滅状態だ。何度か言及したが雑誌売上が書籍売上を下回った所謂書高雑低となったのが2016年のことだが、それから7年、雑誌売上はさらなる下降曲線を描いているのだろう。

 かっては街場の書店にとってはドル箱だった雑誌、それをコンビニが販売するようになり、小さな町の書店はドンドンと潰れていった。その頃はコンビニの雑誌コーナーには立ち読みする客が多数いたし、週刊雑誌などはよく売れていたはずだ。

 しかしその売上も3分の1に減り、返品率も50%超えである。これではビジネスモデルとして成立しない状況なのだろう。とはいえ日販が取引するローソン、ファミリーマートの店舗数は約3万店ともいわれている。その売上がいきなりなくなるのである。

 記事によればコンビニの物流は、セブンイレブンを担当しているトーハンが引き継ぐという。これはひょっとして、長く業界1位の売上を誇ってきた日販はトーハンにその座を譲ることになるかもしれない。

 自分らのように古い世代、1980年前後に出版業界に入った人間からすれば、取次はトーニッパンと略すのが普通だった。売上第一位はトーハン、二位が日販だった。それがいつ頃だったか逆転して今に至っている。

 コンビニへの配送が採算に見合っているかどうかはとりあえず置いておいて、すべてのコンビニの雑誌売上をトーハンが担えば、とりあえず見かけの売上が跳ね上がるかもしれない。

 しかしトーハンが一手ですべてのコンビニ配送を担えるかどうか。多分無理なような気がする。出版取次は日販にしろトーハンにしろ、脱出版化を模索している。雑誌配送で構築した膨大な物流資産を、別の商品の流通に転化する。多分それを本気で考えているはずだ。もう出版では利益は上がらない。出版の薄利多売では物流経費を吸収できない。そういう状況がここ10年くらいずっと続いてきているからだ。

 ひょっとすると日販がコンビニ配送を終了するタイミングで、コンビニもまた雑誌の販売をやめるのではないか。そんな気もする。売上が3分の1に減り、返品率が50%以上という割の合わない商品を、徹底したコスト管理、利益追求を進めているコンビニがいつまで販売することはないのではないか。

 多分考えられるのは、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートいずれにしろ、どこの店舗でも等しく雑誌やコミックを置くようなことはせず、一定の商圏がありそうな地域、もしくは店舗にだけ置くみたいな選別化を図るか。あるいは儲からない終わったコンテンツとして完全に撤退するか、そのいずれなのではないか。

 業界最大手の日販がまず2025年2月末をめどにコンビニ配送終了を宣言する。そしてこれからの1年半の間に、じょじょにコンビニでの雑誌販売を縮小していく。そしてコンビニ配送終了がイコールでコンビニでの雑誌販売終了になる、そういう絵図面じゃないかと思ったりもする。

 セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの総店舗数はおそらく5万店くらいあるだろうか。その雑誌物流をトーハン一社で行うのは困難だ。売上は激減し、返品率5割超えの不良商品である。そして日販同様にトーハンもまた脱出版物流にシフトしている。なので前述したような見かけ上の売上が日販を上回るようなことは起きないのかもしれない。

 今後、取次が配送をやめ、コンビニが雑誌販売から撤退したときにどういうことがおきるか。街場の書店での雑誌販売が盛り返すか。いやそれはないだろう。多分、取次はもう書店への配送も自社系列のチェーン店や大書店に限ってくるだろう。小さな書店にはもう配送されない可能性が高いということだ。

 ネットで情報がいくらでも取れ、コミックなどのコンテンツもスマホで読むのが普通になっている現在。もう雑誌という商品は完全にオワコンなのである。雑誌はいずれコンビニでも書店でも手に入らないものになっていく。毎号読むのであれば送料も込みの年間購読料を払って送ってもらう。そういうことになるのではないか。

 2025年2月末で日販がコンビニ配送を終了する。それはそのまま雑誌という商品の店頭販売の終了になる可能性もあるのかもしれない。