墓参りにいく

およそ2年ぶりくらいで墓参りに行く。場所は神奈川の愛川町という山の中にある公園墓地。毎回のことだが車でたっぷり3時間かかる。父親が死んだ20年前に買った墓だが、まさかその時に埼玉に、ディープ埼玉に引っ越すとは思ってもみなかった。その当時住んでいた横浜港南台からは車でだいたい1時間ちょっとの距離だったし、ドライブがてら気軽に墓参りにもいけるだろうと購入したのだが。今じゃ本当にちょっとした小旅行だ。
この墓を買ったのは葬儀屋に勧められたから、ただそれだけだったと思う。初めての、そしてかけがえのない肉親の死に途方にくれながら、葬儀屋のいわれるままに、ただただイエス、イエスとばかりに動いた葬儀の一環で、勧められるままに購入した。ちょうどわずかながら保険金もあったからすべて墓に使ってしまおうと兄と相談して簡単に決めた。
水郷田名に面した山の裏側にあるこの墓地を始めて訪れた時に、そこが父親と最後にドライブして訪れた場所だったことに驚いたものだった。父親が死んだのは10月の後半だったのだが、ちょうど二週間くらい前に父とふたりでふらりと16号沿いをドライブして城山から津久井湖へと抜けた。その途中訪れたのが水郷田名だった。相模川の河川敷きを二人で散歩した。なんとはなしに二人腰を下ろして川の向こう岸の山を眺めてしばらく黙ったままでいたことをよく覚えている。その山に太陽がしだいに隠れていく夕方の頃だっただろうか。
父のために購入した墓はその山の裏側にひろがる公園墓地だった。「なんだオヤジは自分が埋葬される場所を下見にきたのか」などと兄とよく話したものだった。あれからもう二十年の歳月が過ぎてしまった。
今回の墓参りはというと妻が言い出した。三連休だしずっとシビアな日々だったので正直家でぐたっとしていたかった。それでなくてもウィークデイにできない家事系のお仕事がいくらでもあるのだから。でも、発症以来ある意味それまでは出不精だった性格が180度変ってしまった妻はとにかくどこかへ連れていけと手を変え品を変えリクエストを出してくる。で、今回は墓参りだったわけ。とにかく思いつきであることは間違いないんだけど、まあこっちもずいぶんと不義理しているからなとも思い出かけることにした。三連休だから日曜か月曜にでもと言ったのだが、妻曰く今日が一番天気が良いと。
ところがぎっちょん天気は大荒れ、特に愛川町は神奈川でも山間部にあるのだから、もう断続的に集中豪雨状態だった。それでも3時過ぎに着いた公園墓地では一時雨もやみ、なんとか線香をあげたり、墓石をきれいにしたりする時間もあった。焼香して墓の前で手を合わせたのだが、やっぱりここでも私が一番長く手を合わせていた。妻の病気が良くなること、娘が健康でいること、などなどとどうか暖かく見守って欲しいと墓石の下に眠る父と祖母に祈った。
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