娘、一輪車で車椅子を押す


 外出期限の4時を15分オーバーで病院に戻る。その後すぐに妻は散歩に出たいというので、病室から再び病院の外へ。車に一輪車を乗せてきたので、私が車椅子を押し、娘は一輪車で横について散歩した。
 陸上トラックの方に行ったので、ためしに娘に一周してこいと言うと、驚くなかれ娘は簡単に一周400メートルあろうかというトラックをなんなく回ってきた。さらに妻の車椅子を一輪車で押し始める。ちょっと不安だなと思い横についていたのだが、娘は嬉しそうにしている。妻もまんざらでもなさそうだった。そのままトラックを回りはじめたのでついていくとそこそこ時間かかったが、娘は妻の乗った車椅子を押して400メートルを一周してしまった。これにはちょっとビックリだ。
 娘はちょっと太めで(二年生なのに30キロ強ある)、駆けっこも遅いし、鉄棒もいまだに逆上がりができない。たぶん体育の成績はクラスでも下のほうだろうと推測している。しかしこと一輪車に関しては一年生の中でもかなり早い段階で乗れるようになったし、この車椅子を押してのトラック一周とかを目の当たりにしていると、親バカかもしれないけどそこそこ運動神経悪くないのではとも思ってしまう。最低限そこそこのバランス感覚はあるんだろうな。
 妻の車椅子を押す娘に向かって、
「おい、今のお前はちょっと変わった三輪車になってるぞ」と言うと、最初はきょとんとしていたが、すぐに分かったみたいでニコニコしながら、
「一輪車と車椅子で三輪車か」と合点がいったようだった。
 冬の夕暮れ時、一輪車と車椅子、かたわらを父親が歩く姿。時々行き交う別の車椅子に乗った障害者やその家族たちから、私たちはどんな風に映ったんだろうか。