浜離宮へ行く(1月23日)

 浜離宮に再び行くことに。

 ここは、前回(12月5日)に来ていて、そのときに妻が一人でいるときに転倒して救急搬送された。まあ大事に至ることはなく、顔に青あざつくっただけですんだ。

浜離宮補遺ーバリアフリー・転倒事故(12月5日) - トムジィの日常雑記

なので妻的にはリベンジなのだそうな(なんのこっちゃ)。

 自分的には通信教育の演習のテーマとして、都内の回遊型庭園のバリアフリー状況をレポートしたいということもあり、今後も何度か出向いてみたいと思ったりもしている。最終的には大都市の中に位置する伝統的庭園の今日的な意味とか、もともと外部の

自然を借景として取り入れてきた歴史的遺構としての伝統的庭園の再評価みたいなことを漠然と考えている。実際行ってみると、周囲は高層ビル群が立ち並んでいて、人によっては興醒めする部分もあるようなので。

 京都の庭園などでは大きな樹木などによって周囲の都市化した環境を隠すような造作もできないことはない。でも東京の場合、特に23区内ではそれも不可能である。

 そして周囲の高層ビル群がもっとも顕著なのが今回の浜離宮小石川後楽園についても周囲にビルが目立つようになっている。そして後楽園はなんといってもすぐお隣に東京ドームの異様な姿がジャジャーンと存在している。

 六義園はまだ周囲にさほどビルはないが、それでも周りはマンションだらけであり、内部から見渡すと大きなビルが目に入る場所も多数あったりする。

 これらの現代的借景に積極的な意味性、価値を見出せるか、今、そうしたことについて書かれた文献を調べたりしている。ウェブ上ではいくつか若い建築家などから、積極的に評価する意見も出ているが、書物としてはいまのところ見つけていない。やはり伝統的庭園の歴史性や、定まった本来的価値との間で齟齬があるのかもしれない。

 借景を「自然と反自然的要素とを対立のまま結合する技術」であり「芸術の弁証法*1と論じたのは岡本太郎である。もっとも岡本太郎がここでいう自然と反自然は、外部の自然美と庭園内の人工美という区分けであり、現代の都市庭園はそれとは逆の内部の人工的ながら保全された自然美と外部の完全に人工的な造形物の対比となっている。

 こうした現代の「借景論」については、まだ考えがまとまっていないので、断片的なある意味思い付きの部分でしかないかもしれない。

 

 前回の浜離宮巡りでは転倒事故があったので、きちんと園内を周ることができなかった。なので今回はというと、ほぼ全域を周ることができた。ここは面積が75000余坪あり、日本でも最大級の広さがある。

浜離宮    面積約75,489坪

小石川後楽園 面積約20,000坪

六義園    面積約26,620坪

 浜離宮の特徴は、海水を引き込んだ汐入の庭であり、また二つの鴨場を設け、単なるレクリエーションの場だけでなく、多機能造園空間となっている。

 浜離宮の主な機能としては、将軍家の浜御殿としての居住機能、園外の海や富士への眺望などの遊覧機能、さらに賓客を接待する社交・外交の場、武道訓練場として、馬場や二つの鴨場による鴨猟、さらに鷹匠が常駐して鷹狩など、当時武家のスポーツ的役割を果たしていた。さらに八代将軍吉宗は、ここを殖産研究の場として、製糖所、製塩所、薬草園などを作った。また江戸城から舟で浜離宮に来ることができるため、出城的機能をもっていた他、幕末には砲台屯所ができ海軍奉行支配となるなど軍事拠点の役割も果たしたといわれている。

 

 そうした知識というか、自分的な学習部分はさておき、とりあえず前回は周ることができなかった部分なども。

まずは少し早いけど早春を感じさせる花々など。

咲き始めた菜の花 

 

こちらも早咲きの梅
 
遠目に椿かと思ったが山茶花でした
現代借景

 前述したように浜離宮はどこを向いてもビルばかりだが、それがじょじょに普通になってくるし、なんならどこか現代的な美しさを感じたりもする。以前にも思ったけれど、モダニズム的な機能美と園内の風景は本当に対立しているのだろうか。

 

 

 

 
 
 

 

 

お伝い橋と中島の御茶屋

 浜離宮は臨海地区を埋め立てて造営されているので、ほとんどが平場であり、車椅子通行可ルートが多い。ただし汐入の池とその中にある中島にはお伝い橋を渡っていく必要があるのだが、橋へのアプローチが石段になっていて車椅子では通行不可となっている。まあ介護者がいればいけないことはないし、自分は車椅子検定二級保持者*2なので、たいていの場所はいけないことはない。

 今回も石段の部分をうまく前輪をあげて回避。お伝い橋自体は木造で平坦なので問題ない。

 

 

中島の御茶屋で抹茶とねりきりのセット1000円也

 お茶屋には椅子、テーブル席も用意されている。中に入るときに妻は靴の上にビニール袋をかぶせてもらった。

 
様々なバリア

 前回も書いたが車椅子通行可ルートにも小さなバリアというか、けっこう遊歩道は凹凸があり、車椅子を押していてもそこそこに注意を払わないと、それこそ前回のように転倒するリスクもあったりする。

 

 

 

 そして前回、妻が転倒した場所に行ってみた。妻はその時に転倒のショックで短期的に記憶が喪失していたのだが、なんとなくだが少しずつその時のことを思い出し始めている。なんでも自走していて少し勾配があったので、後ろ向きに上っていて何かひっかかって前のめりに転倒したらしいという。そしてひっかかったのはというと、おそらくこの地上に出ている木の根っこではないかと、そういう結論になった。

 

 後ろ向きに大きな後輪はやり過ごしても、前輪はこの段差だとまず間違いなくひっかる。そしてやや勾配になっているので前のめりになると、多分そういうことだったのだろう。ただ車椅子から投げ出されても、車椅子自体はひっくり返らなかったようで、なんとか自力で車椅子に戻ったと、そういうことだったようだ。そのときは、自分がほんの数分トイレに行っている間の出来事だったのだけれど。

 

 今回の浜離宮はなんの問題もなく1時過ぎから4時過ぎくらいまでのんびりと過ごすことができた。ここは車椅子可ルートも多いし、四季折々の花を楽しむこともできる。海というか運河とその向こうの勝鬨など臨海都市の風景、入ってすぐ後ろには汐留の高層ビル群などの風景もけっして興醒めということもない。

 そしてここは小石川後楽園六義園とは違い、一応身障者用の駐車スペースも整備されている。ということで、多分これからも多く訪れるのではないかとそんな風に思っている。いろいろ細部に注文つけたい部分もなきにしもだけど、伝統的日本庭園の中では比較的障害者には優しいところだと、改めて思った次第。

*1:『日本の伝統』(光文社知恵の輪文庫

*2:実際にはそんな検定はないのであくまで自称。これを人に言うと割と信じてくれたりするので、あくまでジョークです。