伏見稲荷大社 (5月20日)

 ここに来るのは2回目。たしか2010年か2011年あたりだったと思う。あとで写真フォルダーで確認したら2010年だった。その時は外拝殿、内拝殿の工事をやっていて、建物全体がネットで覆われていた。調べると文化財建築の修復工事を専門にやっている小西美術工藝社というところにそういう記録が残っていた。いや便利な時代というか、不確かな記憶も、様々なアーカイブで補填できてしまう。

伏見稲荷大社 | 小西美術工藝社 (閲覧:2024年5月24日)

 そのときは有名な千本鳥居には行っていない。やはり工事とかで入れなかったのかもしれないが、その記録もない。写真では本殿あたり撮った子どもや妻の写真などが数枚残っている。子どもはまだ中学生だったか。

 14年も前に一度ということと、妻が行きたいという事で訪れたの。月曜日の午後ということで人気観光スポットでもさほど混んでいないかと思った。駐車場は割とすんなり入れたし、身障者用スペースも数台開いていた。でも降りたとたん、とんでもない数の人出に驚いた。

 テレビなどで喧伝される観光客でごった返す京都の風景、それがまさに凝縮されている。きけば京都観光で一番人気のあるスポットなのだとか。例によってそういうのはまったく事前調べをしていかなかった。とにかく外国人観光客の数が凄い。感覚的にはそこにいる8割が外国人、その半数以上がアジア系。残りの1割が日本人の修学旅行生、あとの1割は我々のようなシニア観光客か、そこで働いている日本人、そんな感じである。なんというか、日本にいながらにして物凄いアウェイ感だ。

 これがインバウンド、超円安下の観光立国ということなんだろうな。

 楼門、外拝殿の脇の参道はスロープ状になっているので車椅子を押して上っていける。でも左側に土産物店が並んでいて、その前に観光客が沢山いる。なかにはスロープの方で立ち止まっている人もいてうまく進めない。スロープというか坂道を車椅子で上るのって、一気に進まないとけっこうシンドイ。立ち止まっているのも外国人観光客(欧米系の老人)。するとみかねた若い外国人の男の人(この方も欧米系)が車椅子を押すのを手伝ってくれる。「Thank you」と二回お礼をいうと、「You’re welcome」と言って人混みの中に消えていった。助かった。

 世の中には無神経な人もいれば、さりげなく親切にしてくれる人もいる。今回はいずれも外国人だったけど、まあ国籍とかそういうのはあまり関係はないかもと思ってる。

 本殿でお参りしてから、いよいよ千本鳥居にチャレンジ。本殿から最初の千本鳥居までには短い階段がある。例によって、そこは妻は歩いて、自分は車椅子を担いで上る。あとでよく見たら本殿脇から千本鳥居の入り口横のあたりにはエレベーターがあった。

 最初の千本鳥居は緩い坂道で車椅子を押してもなんとかいける。鳥居を抜けると奥社奉拝所とその裏にはおもかる石がある。願い事をしてその石を持ち上げる。石が軽く感じれば願いは叶う。重く感じれば精進が必要だとか。一応自分も持ってみたし、自分が手伝って妻も片手で持ったようなポーズをとる。どう感じたか、それは内緒。

 その次の千本鳥居も緩やかな上りだったが、途中から下りになるのだが、段の広い階段。車椅子を後ろ向きにして降りていったが、さすがにこれは難しい。熊鷹社の手前で迂回路があって下っていけるようになっていたので、ここでリタイアした。妻は歩いてもいいから、先まで行きたかったと言ってたけど、観光客も多いのでさすがにこれは無理だと判断した。

 本殿に戻り、あとは楼門脇から裏参道の土産物屋を少しのぞいてから引き返して駐車場に戻った。外国人の一番の人気のある京都の観光名所伏見稲荷、まあいいところだけど、次また来るかというと微妙。超円安とインバウンドが終了したら、ようは今の喧騒が落ち着いたらまた来ようか。多分、もうその頃には車椅子を押して坂道上る元気もないかもしれないし。

 外国人観光客については、マナーがどうのというようなことはない。ただ人数が多いだけに良い観光客もいれば、そうでない人たちも多少はいる。円安で安く日本に来れるとなれば、教育レベルというのだろうか、まあ平準化するとなれば、レベルの高い人ばかりではないというように思ってしまう。

 例えば10年前の京都や箱根なんかで、アジア系の観光客に車椅子の補助みたいな部分で助けてもらったことが何度もある。みんな英語が話せて、所作も自然だった。そういうところからすると、今、観光地にあふれる外国人たち、とくにツアーガイドの後をゾロゾロ歩いている人たちは、そういう所作に優れた部分はないような気もする。たまに観光で回る程度の自分たちの感想なので、まったく的外れかもしれない。

 ただしこれだけ自国の観光地でアウェイ気分を味わうと、どこか排外的というかニワカナショナリズムみたいなもの、もたげてこない訳でもない。でもそれは絶対に間違ってると思う。良い外国人もいれば、普通の外国人もいる、そして回りを気にしない良からぬ外国人もいる。それは良い日本人、普通の日本人、良からぬ日本人がいるのと同じことだ。

 まあこれだけ多くの外国人が観光で訪れるのだから、いろいろな人がいておかしくない。多分、20世紀には日本人もツアーガイド付きの団体旅行で、良からぬことをした観光者がたくさんいたのだろうから。

 とりあえず京都で一番に人気があるという伏見稲荷大社で、京都のインバウンドの過熱状況を実感した。