手元スピーカーから音が出ない

 一昨日だったか、明け方1階からの声で起こされた件。

「お父さん、テレビの音が出ない」

 ダイニングの壁掛けテレビはテーブルに手元スピーカーを置いている。妻は音が聞こえないとすぐにテレビの音量を上げる。すると自分や以前は同居していた子どもからは、音が大きいとクレームが出る。

 5歳下でその頃は還暦にさしかかるかかからないか。これは加齢による難聴かというと、どうもそうではない。やはり障害の影響なのだろう。脳梗塞による注意障害である。普通の人はさまざまな外部からの情報をなんとなく受け止めてそれで対応できる。人と会話しながらでもテレビの音や画像を普通に聞いたり、見たりができる。でも注意障害のある人は、まあ程度の差はあるけれど、注意を向けないとその情報を瞬時に受容できない。多分そういうことなんだろうとは思う。ようするにナガラ見とかそういうことができない。

 

 注意障害の症状を説明するときによくある例としてあげられるものがある。お湯を沸かそうとしてやかんを火にかける。そこに電話が鳴ったので電話に出る。するとお湯を沸かそうとしていたことを忘れてしまうというやつだ。注意障害のある人は、複数の情報を受容して処理できない。一つの情報に注意を向けると、他のことが忘れる、受容できなくなる。残念ながらマルチタスクは難しい。

 妻の難聴はそういうことなんだろうとは思う。車に乗っていても、多分運転する自分と横に乗っている妻では見ている景色が違うのだろうと思う。「今の看板見た」と聞いても、「なにそれ」ということになっている。そして通り過ぎてしまう。ひょっとして妻にとっての情景は、注意を向けたものだけが見えて、それ以外は曖昧な識別しえないものなのかもしれない。いや、これは確証もないし、医学的な裏付けをきちんとしている訳ではないけど。ただそういうような話を、高次機能障害について学んでいたときに読んだ記憶がある。

 

 妻の難聴もそういう類のものではないかと思っている。そして注意を向けられるようにということで、テーブルに手元スピーカーを置くことにした。家電店やAmazonなどでも、高齢者向けの手元スピーカーはよく販売されている。だいたいは昭和の家電的デザインで、大きな音量ダイアルついていたりする。基本的に有線でテレビのイヤホンジャックから有線ケーブルで接続するタイプだ。値段はまあピンキリだけど安くても5000円前後から1万2千~3千円くらいだ。

 Amazonでポチる寸前でちょっと考えた。これって別に無線でもいいか。となるとBluetoothのスピーカー確か持っていたはずだと。以前、なんとなくただのノリで買ったものがあった。別に風呂で使う訳でもない。たまたま夏場だったか、夕涼みにベランダでビールでも飲むついでに音楽でも聴くかと思って買ったものがあった。iPod classicにトランスミッター接続して音を飛ばすみたいな使い方だったか。こんなやつだ。

 

 でもってすぐに飽きて放置した。5~6年前のことだ。それを引っ張り出して、テレビのイヤホンジャックからケーブルでトランスミッターに接続して手元スピーカーにした。まあこんな感じですか。

 

 その後はずっとBluetoothスピーカーをきちんと有効活用してきた。ときどき音が途切れたり、音が聞こえなくなったりとかあったが、だいたいは再接続みたいなことをやれば使えていた。

 今回もそういうことかと、階下に降りて少し試したがうんともすんともいわない。寝不足だったし、ここでドツボにはまるのもしんどい。誰でも明け方にこういうガジェット系のトラブルだのその復旧だのしたくない。そこでケーブル外して、とりあえずテレビのスピーカーから音だして、とりあえずこれでよろしくということで自室に戻った。

 

 その後、改めていろいろ試してみる。スピーカーの再接続してもダメ。基本うんともすんともいわない。そこでスピーカーを違うやつで試してみる。一応、その後にもっと安いやつ、たしか2000円前後で一つBluetoothスピーカーポチってる。当然使ってない。それでも聞こえない。そこでトランスミッターがいかれたかと思い、別のものを使ってみる。今はあんまり使っていないが、家にはiPod classicの容量を256くらいに増設したのが数個あって、それを外で使うためにトランスミッターが3個くらいある。まあiPod touchがあれば今更iPod classicは使わないな。さらにいえばiPhoneを新しくしてからは、touchもあまり使ってなかったり。

 そこでトランスミッターをiPod classicに接続してスピーカーに流すと、きちんと聞こえたりする。でもものによっては聞こえない、雑音のみ聞こえたりする。これはなんだとなったが、よくよく調べると最初にテレビに接続してあるトランスミッターのものがダメであるとわかる。そして接続ケーブルを替えてみたら、あら不思議きちんと聞こえる。なので元のトランスミッターに別のケーブルをつけてテレビに接続し、あらためてBluetoothスピーカーと接続してみたら、きちんと聞こえるようになった。

 しかしなんていうか、最後に行きついたのがケーブルというオチは笑えるけど笑えない。当たり前のように「そこかよ」という心の声という感じだ。

 電子ガジェット系のトラブルはこういうのアルアルだなと思った。

 昔々の昭和の頃、AV(エロじゃないほう)大好きな友人がいた。けっこうな値段のオーディオセットとVHSビデオレコーダー2台、LDプレイヤー、大型テレビなどなどが壁面を埋め尽くしていた。そしてリモコンも両手近くあったかと思う。遊びに行ったときに「どのリモコンがどれってわかるの」と聞いたことがある。友人の答えは明瞭だった。「いや、すぐわからなくなるので、とりあえず消去法でやっていく」

 ようはテーブルにリモコン置いて、片っ端からスイッチのオンオフしていくという、まあそういうことだった。

 なんでそれ思い出したかというと、消去法も一発目に当たる場合もあれば、一番最後の最後という場合もあるということ。まあちょっと喩えがアレだが、今回の手元スピーカーについていえば、ある意味一番最後に答えがあった。

 

 今回思ったことだが、Bluetoothによる接続について。たとえばスマホBluetoothイヤホンの接続は、スマホの側で視覚的に確認できる。パソコンとBluetooth機器の接続もそうだ。パソコン側で接続機器を選んだりが簡単にできる。でもBluetoothスピーカーにしろ、トランスミッターにしろ接続を視覚的に確認できない。使っているやつがチープなものばかりだからなのだろうか。たぶん価格的に1万超えのものは、ディスプレイで接続を確認できるようになっているのかどうか。貧乏で高いものに手が出ないのでこれは謎だ。まあガジェットの醍醐味はチープで、使い勝手が今ひとつということもある(どんな醍醐味だろう)。

 

 とりあえず一件落着ではあるけど、出来れば明け方にトラブル発生は避けてほしい。