東近美-所蔵作品展 (11月16日)

 東近美の常設展示は9月20日から12月3日まで。9月の末に一度行っているので展示作品はほとんどが同じ。4階のハイライトも安田靫彦《居醒泉(いさめのいずみ)》、川端龍子《草炎》など。

 ハイライト右側の突き当り部分最近ずっと原田直次郎の《騎龍観音》。重要文化財護国寺所有で東近美に寄託されている作品。個人的には原田直次郎というと藝大所蔵の《靴屋の親爺》の方が気に入っている。まああれはドイツ留学時の習作的であり、《騎龍観音》は帰国後、日本的な題材をテーマにした洋画の達成点みたいな位置づけなんだろうとは思う。ただこの龍がどうにもちょっとマンガチックで弱弱しい。

 毎年、年賀状の絵柄は干支に合わせた名画を使っている。いちおうこの作品も候補ではあるのだけど・・・・・・。

 

 

 ハイライトの逆側は東近美所蔵の洋画の名画が期間ごとに展示替えされている。今回の展示作品の並び、セザンヌ、ブラック、萬鉄五郎はちょっと気にいている。形態重視のセザンヌからキュビスムのブラック、そしてキュビスムの日本での初期の受容としての萬鉄五郎である。

 

 

 4階2室は菊池契月の《供灯》。契月作品の中でも気にっている作品。左隻は平重盛像は、平安末期から鎌倉時代に登場した写実性、記録性を重視した似絵のパターンである。その代表は神護寺肖像画三作であり、この描写法が近代の日本画での武者絵はだいたい踏襲されている。

 

 同じく4階4室はだいたいいつも版画の小品が展示されている。今回は棟方志功の企画展にちなんだ作品が多く展示されていたようだ。棟方志功が作品を観て版画に転向したという川上澄生の作品も。

 

 《南蛮船図》 川上澄生 1940年 木版・手彩色

 

 3階の日本画コーナーも前回と同じ。田口善国の蒔絵と田口に日本画を手ほどきしたという奥村土牛作品がいくつか。ここでは土牛のマチエールなんかを。

 

 

 さらに10室奥では、これも多分文人画というよりもどこか棟方志功作品との類似的な雰囲気ということでからか富岡鉄斎作品が展示してある。そのマチエールを確認するというか、拡大してみてみるとなんとなく鉄斎画の凄みというか素晴らしさが感じられる。

 

 

 さらに6室では東山魁夷作品でコーナー化がなされている。この絵の緑は中国古代の青銅器の鈍い緑色をヒントにしているとか。東山魁夷は深いなと改めて。