ポンペイ展のついでということではないけど、当然のごとく常設展示にもよる。こちらでは新春企画「「博物館に初もうで 今年はトーハク150周年!めでタイガー‼」が開催されている。
特別1室、2室で虎にまつわる作品を集めて展示している他、新春吉祥作品の数々も。残念ながら国宝長谷川等伯「松林図屛風」は1/2~1/16までの展示で観ることはできなかった。もっとも本館常設展示の収蔵品は充実しているので、特別展示などなくても十分堪能できる。
竜虎図など含めて虎は画題として江戸時代の絵師にも多く取り上げられているけど、実際の虎を見た者は多分いない。この時代、海外から様々な動物が来たという記録もあり、例えば象は何度か渡来して京都や江戸にも来ているという。なかでも八代将軍吉宗が発注し唐船で渡来した二匹の象のうち一頭はすぐに死んでしまったが、もう一匹は江戸まで来て吉宗の目にも触れ、その後10年以上も生きたという記録もあるらしい。
虎に関して渡来した記録があるのかどうかはわからないが、江戸時代の絵師が実際の虎を写生したということは多分ないらしい。なので写実派の祖ともいべき円山応挙もおそらく中国から伝来した虎図を模倣してこの絵を描いているのだろう。多くの人が指摘するように虎というよりもやはり猫っぽい。
いつものデフォルメの効いた若冲である。スタイリッシュな鶴をなぜにかくもユーモラスに丸く描いたのか。
新春らしく18室近代の日本画の間はオールスターの装いで、まずは横山大観である。
この絵は近代美術館で開かれた大観の大規模な回顧展以来である。確か2018年の開催だから早いものでまもなく4年になる。禅的な無心の境地を童子の姿で表現した作品で、同じ画題の作品がここトーハクの他に水野美術館、足立美術館と3枚あるという。
渡辺省亭は、1878年に作品がパリ万博に出品されたため日本画家として初めて渡仏し、フランス滞在中にゴンクールやドガとも交流している。彼らの前で日本画の技法を見せ驚かせたという逸話もある。絵筆一つで精密な線を描く日本画の技術は、西洋の芸術家にとっては驚異的な技術と思えたのかもしれない。またこの時代は印象派が主流となってきた時代だけに、省亭も光に移ろう風景を描く印象派の描法を学んだりしたのかもしれない。
幕末期、最後の狩野派の竜虎といわれた狩野芳崖と橋本雅邦の二作が観れるのもトーハクならでは。二人は明治維新後、幕府お抱えだった狩野派の没落とともに経済的に困窮し、陶器の下絵や海軍の製図掛りなどをしていたのだとか。その後は来日したお抱え外国人フェノロサに協力して東京美術学校開校に尽力、日本画の復興と近代化を進めたという。雅邦の『竜虎図』のオリジナルは静嘉堂文庫美術館にある。京都の幸野楳嶺門下にいた川合玉堂は、この絵見て上京し橋本雅邦の弟子入りしたという。いつか観てみたい絵だ。
明治期に文人画で活躍した富岡鉄斎の最晩年の絵である。これが88歳の作品と思うと、ちょっとした驚きがある。枯れた老境の絵というよりもどこか若々しい感性を感じさせる。