康耀堂美術館 (8月25日)

 

康耀堂美術館 (閲覧:2023年8月28日)

康耀堂美術館 - Wikipedia (閲覧:2023年8月28日)

 

 清春芸術村の後に行ったところ。ここは茅野市にあり小淵沢近辺からは車で30分くらい。縄文のビーナスで有名な尖石縄文考古館が近接している。どちらかというと縄文考古館がメインで、そのついでに寄るというパターンが多いかもしれない。

 この美術館は元々は佐鳥電機の元会長佐鳥康郎氏の個人美術館として開設され、佐鳥氏の亡くなった後、2005年に京都造形芸術大学(現京都芸術大学)に寄贈され、大学が運営を引き継いでいる。大学では学芸員資格のための博物館実習や学生の風景スケッチなどに活用しているのだとか。

 まあ一応この大学の通信教育を受けているので一度は来てみたいとは思っていた。まあ念願とまでいうつもりはないけれど。

 入館料は300円とかなり安い。清春芸術村の1/5などと比べてはいけないのだろうけど・・・・・・。そして入館料の割にはコレクションが充実している。いやこれは掛け値なしでそう思う。アートを経済的な部分で語ってはいけないのだろうけど、コスト・パフォーマンスが良すぎる。明確にいえるけど、ここは観光地の美術館としてはかなり良質、穴場的な美術館だ。

 展示室はAとBの2室で、その間に池の中庭がある。

 中庭はこんな感じである。

 

 展示室Aは日本画でBの方が洋画。コレクションは400点あまりを収蔵していて、季節ごとに展示替えがあるようだ。

 

 気になった作品をいくつか。

《寒底図》 川端龍子 1955年 143.5✕71.5cm

 蓼科高原川端龍子を観ることができるとは。しかしこの緋鯉と真鯉が交差するという奇抜な構図。こういうのが龍子の真骨頂なのかもしれない。多分、弟子の牧進だったらもっとリアルな鯉を描くのだろうけど、こういう面白い構図はちょっと無理かなどと思ったりしている。

 

《鏑矢》 前田青邨 1971年 64.5✕77.0cm

 

《南瓜》 奥村土牛 1948年 65.0✕72.0cm

 梶田半古、小林古径に師事した人だったか。戦争中に疎開していた縁もあり、佐久市には奥村土牛記念美術館がある。今は耐震工事のため長期休館中のようだが、一度行ってみたいところだ。

 

《大地》 田渕俊夫 1995年 130.3✕97.0Cm

 

《雲烟》 鈴木竹柏 2002年 90.9✕65.2Cm

 鈴木竹柏は中村岳陵に師事し、戦後は日展の理事長、会長を歴任した。2020年に101歳で没している。

 

《天壇一隅》 伊藤深游木 1994年 217.5✕169.0Cm

 伊藤深游木(いとうみゆき)は1954年生まれの女流画家。東京藝大で平山郁夫に師事。細密かつ静謐な印象を与えるいい絵だと思う。

 

《池畔春雪》 悳 俊彦 1990年 112.1✕162.1cm

 悳(いさお)俊彦、初めて名前を知る洋画家。ウィキペディアによれば浮世絵の研究家としても知られるという。精緻な写実性とともにどこか心惹かれるものがある。

 

 康耀堂美術館は何度も足を運びたくな美術館だ。次回は妻を連れて来たいと思った。尖石縄文考古館とセットで観覧すれば、多分一日のんびりできるような気もする。この美術館は高山辰雄のコレクションも多数あるという。今回は高山の作品は一点も展示がなくて残念だが次回に期待かなと思ったりもする。

 この美術館の収蔵作品図録は1000円とこちらも安い。奥付をみると2004年刊行ということで開館してすぐに出たもの。それが格安の理由だろうか。その図録を見ていると中島千波の《晴日・本久寺の枝垂桜》という美しい作品がある。友人も以前観て見事だと思ったという。桜が画題だと展示は春かもしれない。そういう時期に再訪できれば幸運かもしれない。

『康耀堂美術館収録精華作品図録』 120P 220✕270cm 2004年