ワールドカップ雑感

 日本がドイツに続いてスペインにも勝った。衝撃的だが素直に自国代表の勝利を喜びたい。それにしてもドイツに勝つだけでほぼ奇跡に近いのに、わずか一週間足らずで再び奇跡が起きた。長生きはするものである。1996年のアトランタオリンピックでブラジルに1-0で勝ったマイアミの奇跡。あれから26年である。あのときも一生のうちに一度あるかないか、日本代表がブラジルに勝ったと喜んだ。あのときのビデオはDVDに焼いて時々見ていたりもした。まあここ10年くらいはDVDコレクションケースのどこかに仕舞われたままではあるけど。

 まああれが20世紀の奇跡だとして、今回ワールドカップ4度優勝のドイツに日本が勝つ可能性はほとんどないと思っていた。サッカーはブラジルやアルゼンチンが躍動し、フランスやスペインが華麗にプレーし、それでも最後に勝つのはドイツと相場は決まっていた。そういうものだ。

 そのドイツに、とにかく勝負強いドイツに逆転した。正直これでその後二連敗してグループリーグ敗退してもいいと、普通に思ったりもした。案の定コスタリカに敗れ最終戦無敵艦隊スペインである。まあそれでもいい、20世紀に一度ブラジルに勝ち、21世紀にドイツに勝ったのだから。これで今世紀の残り70数年はジャイアントキリングとかなくてもいいからとそう思った。まあこちとらはせいぜい後10年かあと少しくらいしか生きないだろう。いい夢見させてくれたよ。

 ところがどっこい日本代表はスペインにも逆転勝利をおさめてしまった。堂安のスーパーゴール、田中碧のゴールは三苫の疑惑のセンタリングがあったとしても結果オーライだ。導入された機械がゴールだと言ってるのだ。何の問題がある。しかしあのセンタリングはVARが導入されていなければ、人間の目での判定だったら多分99%ゴールラインを割っていたということになるでしょうね。でもね、結果オーライだから。

 しかし生きているうちに、ブラジルに勝ち、ドイツに勝ちスペインに勝った。もう思い残すことはないかなと考えたりもする。もともとは日本がワールドカップに出場することすら、自分の目の黒いうちにはないとそう思っていた時期だってあったのだ。40年前、50年前には本当にそう思っていた。

 自分が十代の頃、日本代表はアジアでも韓国や北朝鮮にも負け続けていたし、中国や台湾ともいい勝負だった。海外の強豪国の代表が日本と試合をすることは親善試合でもほとんどなかった。日本にやってくるのはクラブチームで、それでも日本代表はほとんどの試合で負け続けた。

 日本代表の暗黒時代は多分延々と続くと思った。1994年のアメリカ大会は本選に近づいたがあのドーハの悲劇である。そして98年のフランス大会に初めて本選出場もあえなく三連敗。それでも満足だった。それから6回の連続出場して3度決勝トーナメントに進出した。着実に世界で戦えるようになってきたということだ。

 そして、そして今回のワールドカップでは、ドイツ、スペインと同じという死の組に決まりながら1位通過したのだ。よくやったよ日本代表はと素直に思う。決勝トーナメントは前回準優勝のクロアチアである。まあ普通にやって勝ち目はない。しかも一発勝負のトーナンメントだ。しかしドイツ、スペインにも勝ったチームだ。二度あることが三度おきるかもしれない。それでももしクロアチアに勝ってもおそらくその次にまっているのは常勝ブラジルである。まあブラジルが韓国に負けることでもあれば、ワールドカップの場での日韓戦という、想像しがたい状況が生まれる。まあいいや、ドイツとスペインに勝ったのだから。

 とりあえず日本代表については満足な結果を予選リーグで果たしてくれた。あとは余禄である。そのうえで今後の展開はどうか。実は今回のワールドカップ、通してみた試合は実は数試合である。なので適当な思い込みに基づいた適当な予測しかできない。ただしワールドカップはひと月近い長丁場である。予選リーグで絶好調のチームより、じょじょにコンディションをあげていくチームが優勝するケースも多々ある。

 そういう意味では、苦しんだチームが調子をあげていくということでいえば、個人的にはアルゼンチンけっこういけるのではないかと思ったりもする。メッシの最後の大会である。同じことはクリスチアーノ・ロナウドポルトガルにもいえるかもしれない。

 予選リーグで一敗を経験したチーム、アルゼンチン、フランス、ポルトガルは侮れないと思う。同じことはスペインにもいえるが、なんとなく若さを感じる部分がある。このチームは多分4年後の方が強くなる。

 予選リーグで順調だったイングランドは、いつもの勝負弱さでまた敗退みたいなことになるかもしれない。0-0か1-1からのPK戦での敗退といういつものパターンか。でも、今回のチームは主力がちょうどキャリアの全盛期にあり、そこに若手がフィットしているのでいけるかもしれない。

 という訳で、現時点での決勝はというと、順調にいけばブラジルとフランスあたりになるのだろうが、個人的にはずばりアルゼンチンとイングランドでどうだろうか。まあ50年来のイングランド代表ファンを自認しているので、今回こそ決勝にコマを進めて欲しいという願望、ただそれだけのことである。

 さらにいえば4年後楽しみなのはスペインとアメリカである。アメリカは本当にバランスのとれた良いチームだと2試合を見ただけでの印象だが。

 いずれにしろサッカー・ワールドカップは楽しい。