加山雄三、コンサート引退

 6月20日朝日新聞文化欄に「加山雄三さん コンサート引退へ」という記事が載っていた。

加山雄三さん、コンサート引退へ 「まだ歌えるうちに辞めたい」 9月に「ラストショー」:朝日新聞デジタル

 加山雄三さん(85)が、年内をもってコンサート活動を引退する。朝日新聞の取材に明らかにした。歌手デビューから60年超。障害現役を掲げていたが、脳梗塞などの病に倒れたここ数年で「人間、いつかは終わる」と引き際を考え、「歌えなくなってやめるんじゃなくて、まだ歌えるうちに辞めたい」と決断した。

 淋しいね。85歳になるのか。

 加山雄三は多分自分にとって最初のアイドルだったような気がする。

 曖昧な記憶を辿ると、一番最初に口ずさんでいた曲は「上を向いて歩こう」らしい。1961年だから5歳くらいのことだ。親や兄の話では、守屋浩や水原弘なんかも歌っていたらしいのだが、そのへんの記憶はない。ただし「上を向いて歩こう」の替え歌、♪♪下を向いて歩こう お金が落ちてるかもしれない♪♪なんてのを歌った記憶がある。

 それから小学校に上がってすぐ、多分二年生の頃には当時中学生だった兄の影響でビートルズを聴き始めた。兄と一緒に「ヤア!ヤア!ヤア!」を観に行ったことはけっこう鮮明に覚えている。一緒にやっていたのは「アイドルを探せ」だった。盗んだ宝石を楽器店のギターに隠したけれど、回心して宝石を見つけ出し自首しようとする若いカップルの話だったか。ギターは同じモデルが5つあり、買ったのが全員人気歌手で、カップルは歌手の訪ねていくみたいな話だった。

 当時、小学低学年の割にはけっこうビートルズ聴いてたみたいで、「恋する二人」、「プリーズプリーズミー」のハーモニカのパートを手持ちのハーモニカで吹いたりしてた記憶がある。

 そしてビートルズの次にはまったのが加山雄三だった。若大将シリーズもよく観たし、なによりエレキギターを弾きながら、自作の曲を歌う加山雄三は子ども心にカッコ良かった。小学高学年くらいになるとグループサウンズが流行りだしたが、バンドとしてのクオリティは加山雄三の方がはるかに上だと思っていた。当時の彼のバックは寺内タケシだったり、ワイルドワンズであったり、ランチャーズであったりした。

 中学に入って自分でもギターを始めてみると、加山雄三の楽曲のコード進行やギターがけっこう斬新なものだと改めて思ったりもした。「ブラック・サンド・ビーチ」や「夕陽は赤く」のイントロなんかはけっこうシビレた。

  二枚目スターとしても、音楽だけでなくスポーツ万能、スキーは国体レベル、ヨットやサーヴィンもこなす。子ども心的には将来はああいう万能なナイスガイになりたいものだと思ったりもした。

 役者としてはなんとなく大根役者的な感もあったが、あれは若大将シリーズを含めたナイスガイのイメージありきのキャラだったからだと思う。なんとなく加山雄三は音楽バカ、スポーツバカという感じもしたが、実はかなりのインテリで、たしか相対性理論とかを普通に論じたりしていたように覚えている。音楽も記事の中でも幼少期から死ぬほどクラシックを聴いたというが、たしか交響曲を手掛けたことがあるという話も聞いたことがある。

 かってジョン・レノンが死んだときに、矢作俊彦は冗談ぽく「ジョンが死んでも、我々にはジュリーがいる」とエッセイに書いていたことがあった。そういう意味でいえば、「我々には常に加山雄三がいた」のだと思う。

 年齢的には85歳、もうステージパフォーマンスが限界なのかもしれない。90を超えてステージに立っていたのは、例えば亡くなったシャルル・アズナブールとか、つい最近まで来日公演もしたバート・バカラックとか。

 一方で6月18日に80歳を迎えたポール・マッカートニーは今もライブ・ツアーを続けている。バックバンド4人だけを引き連れて2時間以上のライブを行っている。ポールはベジタリアンで相当に節制しているとも聞く。まあエイジレスのために相当な金をつぎ込んでいるかもしれない。2013年と2015年に来日した時には3回ドームに足を運んだけど、一緒に行った友人にポールはサイボーグじゃないのとジョークを言ったように覚えている。

 ポールのようなライブ・パフォーマンスを望まないにしろ、加山雄三にはまだまだ頑張って欲しいとそんなことを思ったりもする。なんならステージにいてちょっと動いて、1~2曲歌ってくれさえすればとはファンの率直な思いだ。動く加山雄三が見れればそれでいいみたいな感じか。例えばリンゴ・スターのオールスターライブだと、リンゴは時々歌い、時々ドラムをちょっと叩く、あとはピースマークのパフォーマンスだけ。あれでいいとか思ったり。

 加山雄三のコンサート引退が出来れば撤回されてくれればとか、また1年かそこらしてもう1回みたいなことがあるのかどうかはわからない。でも、もし今回がラスト・ショーだとしたら、その最後の場が東京国際フォーラムでの公演というのはちょっと淋しいような気がする。

 加山雄三の音楽に影響を受けたアーティストけっこういると思う。例えばアルフィーとか桑田佳祐とか。彼らをバックに多数のゲストを集めてだったら東京ドームでのワンナイトはいけるのではないかと思ったりもする。チケットが取れるなら自分も行きたいと思ったりもする。

 今、レコード棚をひっくり返したら、小学生の時に最初に買った33回転4曲入りレコードが出てきた。55~6年くらい前のものだろうか。持ってるプレイヤーにはアダプターがないからかけることできないけど、これ聴けるのだろうかね。