TAMBA4とCTI

二人と海

二人と海

  • アーティスト:タンバ4
  • ユニバーサル ミュージック
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 ネット周遊していてこのアルバムのカバー画像を見つけて思わずポチった。懐かしい懐かしいCTIレーベルの多分1期のものだ。70年代の初めの頃にCTIレーベルのカタログを見ていて、そのお洒落なカバーデザインに食い入るようにしていた記憶がある。中学生か高校上がったばかりの頃だろうか。レコードアルバムは当時1枚3300円くらいしたので、そう簡単に買えるわけもなく、行き始めたばかりのジャズ喫茶でよくリクエストした。CTIレーベルのアルバムはいまでいえばフュージョン、当時はクロスオーバーとかいわれていた時代だから、ジャズ喫茶でかかるとけっこう顰蹙ものだった。

 その後、勤め始めてから廉価版で1枚1500円くらいで出始めた頃にけっこう買い集めたのだが、この「二人の海」は買うこともなかったし、ほとんど聴いたことがなかった。いちおう表題曲の「二人の海」だけはなんどか聴いたことがあったので、いわゆるCTI的なイージー・リスニングと思っていたのだが、最初から聴いてみるとこれはよくいわれるようなボサノバ・コンボの心地よいボサノバ・アルバムではない。ジャズ・コンボとしても当時としてもかなり先駆的な感じ。

 1曲目のアントニオ・カルロス・ジョビンの「オー・モロ」、7曲目バーデン・パウェルの「コンソレーション」などはクラシックの室内音楽、それも現代音楽風である。そこからボサノバへと現代音楽が交互に繰り返される。

 タンバ4はピアニスト、ルイス・エサを中心としたコンボでもともとはトリオで1960年代初頭から活動を始めた。エサ自身はもともとクラシック・ピアノからキャリアをスタートさせ、50年代にはナイトクラブなどでの演奏をしており、いわゆるボサノバの創成期に参加している。

Luiz Eça – Wikipédia, a enciclopédia livre

 1936年生まれで1992年に52歳で没しているのでけっこう早世という印象だ。アントニオ・カルロス・ジョビンが1927年生まれ1994年没(67歳)とほぼ同時代の人という感じだ。タンバ4のパーソナルは以下のとおり。

ルイス・エサ(p、org)

ベベート(fl、b、per)

オアーナ(ds、conga、jawbone)

ドリオ(g、b、per)

 もともとはルイス・エサとパーカショニストのエルシオミリート、ベベートの三人でタンバ3として活動していたが、ミリートに代わりオアーナが参加、さらにドリオが加わってタンバ4として活動したという。

 「二人の海」はタンバ4のアメリカ・デビューアルバムである。このアルバムではオーケストラなどの弦は入っていない。トリオもしくクインテットでの演奏に後からコラースを被せているだけでシンプルな構成になっている。その分、演奏はイージー・リスニングというよりも当時のメインストリーム的なジャズテイストに溢れている感じもある。ただしこれはプロデューサー、クリード・テイラーの趣味かもしれないが、ブラジル的な野趣は削がれていて、良くも悪くもソフィスティケートされている。

 しかし50年以上を経過していてもちっとも古さをかんじさせない。例えば同じCTIレーベルでも、当時流行ったイージー・リスニング系の演奏にはそれなりに古さを感じさせるものもあるのだが、このアルバムにはそれがない。多分、洗練されたボサノバやジャズ風味だけでなく、ルイス・エサがもともと持っているクラシック、現代音楽への指向性みたいなものが影響しているのかもしれない。

 なんとなく聴いているとジャケットのもついかにも感の懐かしさと、意外と劣化してない音楽へのギャップみたいなものを感じている。

 

 ついでにCTIについてのメモ。

CTIレコード - Wikipedia

 名物ディレクター、クリード・テイラーによって1967年に創設されたジャズ・レーベル。イージー・リスニング・ジャズ系のジャズは多分このアルバムから生まれたのかもしれない。もっというとこのレーベルからの第一弾、ウェス・モンゴメリーの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」から生まれたとっても過言じゃないかも。

Day in the Life

Day in the Life

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 当時、CTIの解説とかを読むと、クリード・テイラーはジャズ・レーベル、インパルスを興したあとヴァーブに移りアントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムなどを手掛けた。その後、新興レコード会社A&Mに100万ドルの契約金(確かそんな額だったと)で移籍したとかあったような記憶をしている。プロデューサーに100万ドルの契約金ということも破格だと記されていた。

クリード・テイラー - Wikipedia

クリード・テイラー|ソウル&ファンク大辞典

CTIレーベルについて私が知っている二、三の事柄 : あなたまたレコード買ったのね

 A&Mレコードはトランペッター、ハープ・アルパートとジェリー・モスが1962年に創設した新興レコード会社。

A&Mレコード - Wikipedia

 所属アーティストは初期にはセルジオ・メンデスクロディーヌ・ロンジェ、その後はソフト・ロック系をメインにしてバート・バカラックやその秘蔵子でもあるカーペンターズなどが大ヒットを飛ばして一大レコード会社に成長する。

 そもそもハーブ・アルパートはメキシコ風マリアッチのバンド、ティファナ・ブラスのリーダーであり「蜜の味」などをヒットさせている。我々の世代だとオールナイト・ニッポンのテーマ曲「ビター・スウィート・サンバ」が馴染深い。

  ハーブ・アルバートは1935年生まれで現在86歳存命である。アーティストとしても実業家としても成功した人だ。たしかこの人の奥さんはセルジオ・メンディス&ブラジル66のボーカル、レニー・ホールだったと記憶している。

 

 話をCTIに戻す。どんなアルバムが出ていたかとググってみると、当初から日本の発売はキング・レコードだがその再発されたリストがネットでも検索できる。懐かしい。

CTI SUPREME COLLECTION KING RECORDS OFFICIAL SITE

 発売当初はどんなラインナップだったか、そして3000番台と6000番台のラインナップなどはこちらのサイトが懐かしい。自分が聴き始めたのは71年あたりからなので3000番台と6000番台を混在して聴いてのがよくわかる。こうやってリストを見ていると、もう一度集めてみたい誘惑にかられる部分もあるが、多分時代的な限界というかきっと古くて退屈な演奏、いかにも売れ線に走った安直なものなども多数あるかもしれない。

CTI Records - Wikipedia