リチャード・グルーブ・ホルムズ

ニュー・グルーヴ 初めて聴く人である。この人のことはほとんど知らない。ファンキー系のオルガニストであるというくらいの知識だ。以前愛読していたラズウェル・細木のジャズ・コミックの中でほんのちょっと紹介されていた。確かマイルスの死についてのやつだったか。1991年6月29日にホルムズがガンで亡くなったということが唐突に描かれている。いっておくけどラズウェル・細木のコミックはギャグマンガである。ジャズについての豊富な知識をもとにジャズの業界周辺を面白おかしく描いたものだ。その中でほんの数コマ描かれるホルムズの名を覚えていた。
よく行く坂戸のTUTAYAの小さな小さなジャズコーナーに面陳でおいてあるこのアルバムを何度か目にしてはいた。一、二回は手にとったことがあったかな。「あああのホルムズね。ファンキーものだね、いつか聴いてみようかね」そんな感じでまた棚に戻す。まあそんな感じ。今回は5枚で1000円借りられるというので、最後の1枚なんにするかというところで、とりえずこれでいいかみたいな感じで借りてきた。
とりあえず聴いてみる。昔ならとりあえず針落としてみたといいたいところなんだが。う〜ん、なんていうのだろう、期待通りのどファンキーである。お決まりのパターンである。本作は1974年の録音である。時代を感じさせる。まさに70年代の音である。涙が出るような、イージーかつブルージー、アーシーなファンキー・ジャズである。最初にイージーと形容したのは、どファンキーではあるがけっこう精練されている。くさい言い方だけどソフィストケイテッドっていうのかな。聴きやすい。この時代に流行ったイージー・リスニング・ジャズの本道を行くという感じだ。
ファンキーなのにラテン系も取り入れていて、ボサノバのナンバーが2曲入っている。3曲目の「MEDITATION」、7曲目の「HOW INSENSITIVE」だ。流行のボサノバナンバーも取り入れてラテン・ファンキーに仕上げている。「MEDITATION」のお気楽さは最高である。最高に楽しいナンバーに仕上がっている。何度聴いても飽きがこない。実はいまもリピートで繰り返しかけている。真面に聞き込む必要などはない。完璧なるBGMである。心地よく心うきうきさせるチューンである。なんていうのだろう、超ファンキーなワルター・ワンダレーとでもいうべきか。ボサノバの名曲がこんな風にファンキーに早代わりしてしまうのである。黒人ミュージシャンの偉大さというか、ソウル・ブラザーの凄みを感じさせてくれる。
おそらくホルムズにかかると、クラシックであろうがシャンソンであろうが、カンツォーネであれ、演歌であれ、なんでもこんな風にどファンキーになってしまうのだろうな、などと想像する。それは多分北島三郎がジャズ・ナンバーを歌っても全部演歌になるのと同様である、ってあまり想像したくないことだが。
ホルムズのポートレイトがジャケットの裏側にあるのだが、貫禄ある見事なデブである。その巨体から軽快かつ小気味良い音がシャワーのように繰り出される。
このアルバムは買いである。そして21世紀にあってもけっして古びた印象がない。小気味よいオルガンによるファンキー・チューンは今でも視聴に値すると思う。さらに思うがたぶんグループ・ホルムズとかが例のアシッド・ジャズとかのルーツなのかなとも思う。もっとも私などが知らないだけで、このへんの音楽は遠の昔にサンプリングされているのかも知れない。
http://www.asahi-net.or.jp/~NG1F-IST/acid.html:TITLE
とにかく小一時間幸福な気分でいられる一枚ではあったかな。

1. Red Onion
2. No Trouble on the Mountain
3. Meditation
4. Good Vibrations
5. You've Got It Bad
6. Chu-Chu
7. How Insensitive