東京国際フォーラムでの『筒美京平の世界 in コンサート』に行ってきた。
ライブの発表が新聞広告に出ていたのは知ってたのだが、まあよくある同窓会的なやつかとスルーしてたのだが、友人が行きたいからチケットを取れという。さらにいえば誕生日のプレゼントで奢れという過度な要求。正直なところ15000円は高いと思ったし、これってスケールの大きな「夢コンサート」みたいに思っていたのだが、40年来の数少ない友人なので無碍にも出来ず、まあ抽選当たったらねということにしていた。
しかしこういうのに限ってきっちり当たる。すぐに決済も行われ4月上旬にはチケットも最寄りのコンビニでゲット。ということで行くことにした。自分もけっこうミーハー気質だが、さすがに歌謡曲ライブにはあまりテンション上がらないのだが、友人はけっこう盛り上がっているようで、まあなにより。
東京国際フォーラムは初めて来る。というか有楽町近辺がこんな風に変わってしまったのが驚き。って、ここは旧都庁跡地だし、建物自体は1997年開館しているんだけど、もうその頃にはディープ埼玉に引っ越していたので、有楽町近辺はとんと縁がないまま20数年が経っている。まあお上りさんなのでとりあえず国際フォーラムで雨宿りしながら対面あたりのイメージショットなんかを。
ライブはというと5時開演で2部構成、途中に30分の休憩があったけど全部で43曲、終わったのは9時近くと長丁場。かなり充実したライブ=コンサートだったと思う。スケールの大きな夢コンサートと、ちょっと引いた感じだったのだけど、まあ知っている曲ばっかりだったので、最初の数曲目あたりでもう破顔というか、もうウルウルしてしまった。多分4曲目の平山みき「真夏の出来事」、10曲目の太田裕美「木綿のハンカチーフ」あたりで涙腺崩壊みたいな感じだった。
観客はまあほとんどが自分と同年代かもう少し上くらいだっただろうか。自分の知っている筒美京平はほぼほぼ1970年代なんだけれど、彼は80年代から2000年代くらいまで様々なアイドル系の歌を作っている。なのでそのへんを謳歌したファン層もいるので、50代くらいの層もけっこういそうだとは思った。
このコンサートの良かったところはまず司会者がいないこと。往年のアイドル、実力派歌手が持ち歌を披露するが基本は1曲ないし2曲。2曲披露する歌手が曲の合間にちょっとしたMCをするけど、それもほんの短時間。よくありがちな長々としたMCは一切なしであくまで筒美京平の楽曲が主役という演出。次の曲、演者が画面中央のスクリーンに出て曲が始まるというのがとても好感が持てた。
こういうコンサートだとネームバリューとかで時間の長尺があったり、やっぱり大御所がトリをみたいなことがあるのだと思うが、そういうのもなし。筒美京平の楽曲の前では歌手はみな平等みたいな感じである。なので平山みきも大橋純子もジュディ・オングも1曲ずつ。2曲歌うのは郷ひろみ、野口五郎、太田裕美、庄野真代などなど。
歌の上手い森口博子やNOKKOは熱唱するし、浅田美代子や斉藤由貴はかってと同じくたどたどし気に歌っている。浅田美代子は歌い終わると胸に手をあてホッとした仕草をしているし、聴いている我々も同じようにホッとしている。そのへんはかってそうだったのとまったく同じだった。
後半に松崎しげるが「さらば恋人」を歌ったときには、彼は「またあう日まで」じゃないのかと思ったら、アンコールでもう一度出てきた歌った。そしてほとんどの出演者も出てきたグランドフィナーレとなった。まあこのへんの展開はなんとなく想像がついた。
このコンサートが良かったのは楽曲中心ということもあるが、まずなによりもバックバンドが実力派揃い、とにかく一流のミュージシャンが揃っていたこと。さらにいえばストリングスメンバーが多数参加していたこと。やっぱり筒美京平の曲にはストリングスは必須という感じがしたし、けっこうそれだけで思いのほか感情移入してしまった。
バックバンドのメンバーはウェブサイトにもあるがこんな感じ。
船山基紀(音楽監督・指揮)/中西康晴(key)/安倍潤(key)/土方隆行(g)/
増崎考司(g)/吉川忠英(g)/高水健司(b)/山本秀夫(ds)/
斎藤ノヴ(perc)/ルイス・バジェ(tp)/竹内悠馬(tp)/鍵和田道男(tb)/
アンディ・ウルフ(s)/石亀協子(strings)/
セットリストはすでにTwitterにも上がっていたので参考にさせてもらった。
うさぎさんのお母さん@ 筒美京平トリビュート~ザ・ヒットソング・メーカー筒美京平の世界inコンサート (@rabbitmammy) | Twitter
第一部
2.だれも知らない 伊東ゆかり
4.真夏の出来事 平山みき
5.芽ばえ 麻丘めぐみ
7.赤い風船 浅田美代子
8.にがい涙(スリー・ディグリース) AMAZONES
11.九月の雨 太田裕美
14.青い地平線 ブレッド&バター
15.哀愁トゥナイト(桑名正博) 大友康平
16.セクシャル・バイオレット・NO.1(桑名正博) 大友康平
17.ドラマティック・レイン 稲垣潤一
20.あなたを・もっと・知りたくて(薬師丸ひろ子) 武藤彩未
21.卒業 斉藤由貴
第二部
23.Lucky Chanceをもう一度 C-C-B
24.WAKU WAKUさせて(中山美穂) AMAZONES
25.One Way Generation(本田美奈子) LIttle Black Dress
27.人魚 NOKKO
28.AMBITIOUS JAPAN!(TOKIO) ROLLY
29.17歳(南沙織) 松本伊代・早見優・森口博子・武藤彩未
30.男の子女の子 郷ひろみ
33.グッドラック 野口五郎
34.時代遅れの恋人達 中村雅俊
35.海を抱きしめて 中村雅俊
40.魅せられて ジュディ・オング
アンコール
41.雨だれ 太田裕美
42.裸のビーナス 郷ひろみ
しかしほとんどの曲を自分は知っているし、ほぼ同時代的に聴いてきた。とくに注意して聴いていなくてもヒット曲として入ってくる。本当に多彩なヒットメーカーだったと改めて思ったりもする。ウィキペディアで彼の足跡を確認すると本当にヒット曲を量産していたことがわかる。
そのうえであえていうと自分にとっての筒美京平は1970年代の人という感じだ。彼の曲、ヒット曲は特に1971年が怒涛の快進撃だった。それは自分にとってほとんど最初のアイドル的存在だった南沙織の登場と軌を一にしている。試みにあげてみるとこんな感じだ。
また逢う日まで 1971年3月
さらば恋人 1971年5月
真夏の出来事 1971年5月
17歳 1971年6月
潮風のメロディ 1971年9月
1971年、自分は確か中学3年生だった。買ってもらったガットギターにスティール弦を張り音楽雑誌に掲載された楽曲のコード譜をジャカジャカさせていた。洋楽はビートルズ、邦楽はフォークを主に聴いていた。そんなところに筒美京平の歌が北山修作詞の「さらば恋人」、そして南沙織の「17歳」と共に流れてきたんだと思う。
さらにいえばその頃はラジオで音楽を聴く時代だった。まだカセットテープもあまり普及していない頃で、家には大きなオープンリールのデッキがあった頃だ。そういう時代、筒美京平のヒット曲はいつもラジオから流れてきた。
ライブの中で郷ひろみや野口五郎が筒美京平の曲を歌い始めて50年というようなことを話していた。自分もほぼ同世代、そう筒美京平のヒット曲を聴き始めてから50年の月日が経つのだということを再確認してしまった。
筒美京平の活躍期間は70年代にとどまらず2000年くらいまで続いている。特に80年代から90年代にかけてはジャニーズ系のアイドル-近藤真彦や田原俊彦、少年隊や小泉今日子等にも沢山のヒット曲を提供している。今日のコンサートでも田原俊彦の曲を藤井隆が歌っていたが、出来れば近藤真彦、そして何よりも小泉今日子には出演してほしかったかもしれない。彼女は80年代アイドルのイコンの一人だったからとか思ったりもする。
まあ3時間の長丁場のコンサートだったが思いのほか楽しめた。チケット買ったときに思ったスケールの大きな「夢コンサート」は撤回させていただきます。行って良かったと思っている。