マイルス・デイビス クールの誕生

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マイルス・デイビス: クールの誕生 | Netflix

 これもNetflixで観た。2019年製作のマイルス・ディヴィスの生涯を描いたドキュメンタリー。去年の秋に公開されていたのは知っていたが単館上映だったこともありスルーしていた。

 マイルスの伝記を読んでいれば割と自明なことばかりなのかもしれないが、断片的な情報だけで接してきた者にとっては、けっこう新鮮は話題も多く興味深いことも多かった。マイルスの音楽的志向性については細かく追うこともなく、どちらかといえば彼の人間性に沿ったような話が多かったか。

 マイルスの音楽性において転機となったのは、マイルス・グループへのビル・エヴァンスの参加とモード・ジャズの発見だと思うのだが、そのへんは軽く描かれている。それよりもギル・エヴァンスとの絡みによる『マイルス・アヘッド』のあたりを細かく描写している。そのへんはタイトルにあるように「クールの誕生」、クール・ジャズの生成みたいなことからくるのかもしれない。それにしては1948年の『クールの誕生』の録音についてはあまり割かれていないようにも。

 ドキュメンタリーとしてはマイルスの人間性を描くために、彼の女性関係とかにかなりウエイトをおいているようにも思えた。とはいえ彼の最初の結婚とその破局については実はほとんど触れていない。マイルスの年表とかを見てみると、彼の最初の妻アイリーンと知り合ったのは16歳、18歳で長女が生まれ、20歳の時に長男が生まれているのだけど、そのへんもあまり触れられていない。

 マイルスは23歳の時にタッド・ダメロンと共に渡欧してパリ・ジャズ・フェスティバルに参加する。そのときにまだ無名だったシャンソン歌手ジュリエット・グレコと恋仲になる。彼女の紹介でサルトル等の文化人とも知遇を得たという。あのジュリエット・グレコとマイルスが恋人同士だったというのは実は初耳だった。

 その後は『SOMEDAY MY PRINCE WILL COME』のジャケットでも有名なフランシス・テイラーと出会う。彼女がそこそこ人気のあるダンサーだったこと、舞台版の『ウェスト・サイド・ストーリー』のオーディションに受かり出演寸前だったのに、嫉妬深いマイルスの反対で降板したことなども綴られる。そう、マイルスは首尾一貫して傲慢な男なのだ。マイルスとフランシス・テイラーの結婚が破局を迎えるのも、マイルスの過度なDVによる。

 その後、1968年にソウル歌手ベティ・メイブリー(ベティ・デイビス)と結婚する。彼女の影響でスライ&ファミリー・ストーンらの音楽に触れてマイルスは電化マイルスへの変貌する。ベティとは翌年離婚するが、68~69年以降のサイケなマイルスのファッションはみなベティの影響だそうな。

 1981年シシリー・タイソンと結婚、1989年離婚。その後女優のマルグリット・カントゥと交際。1991年、マイルスの最後を看取ったのはその時点でパートナーだった白人女性画家ジョー・ゲルバード。

 マイルスが死んで30年の歳月が流れる。モダン・ジャズの巨匠ももはや歴史の中にエポックメーキングを刻むミュージシャンの一人になってしまったのかもしれない。この映画を観て聴きたくなったのは、映画でも取り上げられていた『マイルス・アヘッド』と『TUTU』だった。

http://milesdavis.jp/chronology-of-miles-davis/

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  • アーティスト:Miles Davis
  • 発売日: 2015/10/01
  • メディア: CD
 
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