ブルーノート・レコード ジャズを超えて

 アマゾンプライムビデオで観た。以前から気になっていたドキュメンタリー。確かどこかでこの作品の公開についての告知を観た記憶がある。多分、Bunkamura美術館に絵を観に行った時だったような気がする。

Bunkamura30周年記念 ブルーノート・レコード ジャズを超えて | ル・シネマ | Bunkamura

ブルーノート映画『ブルーノート・レコード』 - 映画

 様々な証言によってブルーノート・レコードの歴史に迫るドキュメンタリーである。証言するのは存命のミュージシャンたちである。ルー・ドナルドソンウェイン・ショーターハービー・ハンコックなどなど。そして大きく取り上げられるのは、例えばセロニアス・モンク、バド・パウェルアート・ブレイキーなどなど。

 さらに現在、ブルーノートで活躍する若手ミュージシャンとショーター、ハンコックの共演した演奏風景も描かれる。

 ジャズファンにとってはたまらない内容である。自分も85分という時間、テレビ画面にくぎ付けになっていた。ジャズは、モダンジャズは、ある意味ブルーノートと共に歩んできた。1950年代から1960年代にかけてはまさにそうである。大手レコード会社と契約したスター・プレイヤー、マイルス・デイビスでもブルーノートに印象的なアルバムを数枚六慧遠している。そしてキラ星のようなスター・プレイヤーたち。

 しいていえば、50年代のハードバップの創出される過程を全部アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズへのスポットライトで括っている点が若干不満だ。さらに60年代の二大ヒット曲「サイドワインダー」と「ソング・フォー・マイ・ファーザー」だけでファンキーへの転換とブルーノートの衰退を描く部分も少しひっかかる。

 個人的な思い入れかもしれないけれど、レコードの番号-ブルーノートといえば1500番台と4000番台-によってその歴史を語ってくれても良かったかもしれないと思ったりもする。そして各年代を彩ったミュージシャンも例えばハンク・モブレーリー・モーガンジミー・スミススタンリー・タレンタインなどにもスポットを当ててもよかったかもしれないとも。特にジミー・スミスはヴァーブに移籍したとはいえ、ブルーノートでヒット曲も多く貢献度の高いアーティストだったのだから。

 さらにいうと、このへんはもう完全に個人的趣味の部類になるが、日本でこそ人気が高いが本国ではほとんど無名な存在だったというソニー・クラークやたった3枚を残しただけで本国ドイツに帰ってしまった女性白人ピアニスト、ユタ・ヒップ、アルフレッド・ライオンの片腕として新人発掘やセッションメンバーの調整などにあたったアイク・ケベックなどにも触れてほしかった。

 なにはともあれブルノート・レコードというレーベルにスポットをあてたドキュメンタリーは秀逸はモダンジャズ創成を描いた映画としてそこそこの完成度を持っている。ジャズ好きや、ジャズに興味がある人は観といて損はないと思う。

 最後に字幕翻訳が行方均となっていた。ジャズ・プロデューサーとして一世を風靡し、2018年に白血病で急逝したあの行方均である。彼にとって最晩年の仕事の一つがこの映画の字幕翻訳であったのかと思うと、なんとなく淋しい気持ちになる。