兄の病状

 火曜日、兄からメールで翌日埼玉医大に通院するときに送って行ってくれるどうかというメールがあった。以前から25日に通院すると聞いていて予定もしていたので大丈夫と返事をした。そしてその日は透析があるので、そっちは大丈夫かとも書いておいたところ、透析にはいけるとの返事だった。

 それで家の諸々用事をしていたところ、10時少し過ぎた頃に電話があり足が痛むので透析に行けない。病院に電話したところ連れてきてもらえといわれたという。急遽、兄の家に向かい、30分近くかけて1階まで下りてきた兄を車に乗せて病院まで連れていく。駐車場から車にカミさん用に積んでいる車椅子に兄を乗せて透析センターまで向かう。その間に話を聞くと、なんでも兄は埼玉医大を退院した後、右足をひねって捻挫したことは聞いていたが、先週末には自宅でカップ麺をこぼして左足に火傷を負っていることなどがわかった。

 さらに2週間前にいった埼玉医大で再入院を勧められたのだが、それを本人は断ったことなども透析センターの看護師から聞いた。その日は送迎で自分も付き合っていたのだが、診察には立ち会わなかった。医師からそういう申し出があったことも兄は自分には話をしていない。後で聞いたところでは、埼玉医大では切断した右足の親指とは別に、左足の親指にも部分的に壊死が認められるので、切断したほうがいいので入院を勧められたという。兄は透析を受けている病院の皮膚科では、まだ切断するほど状態が悪くないいわれているので断ったということだった。

 いずれにしろ1人で透析に通えない状態なので、現状では独居させるのは難しく、入院させる必要があるとは自分もそう思ったし、看護師も同じ見解だった。そこで25日の埼玉医大での診断如何でどうするかをを決めていくことになった。

 その日は透析終了後にまた兄を迎えに行き自宅に送った。家にはちょうどヘルパーが来ていて、ヘルパーが掃除をし、布団にも掃除機をかけてくれていること、洗濯物の取り込みや畳んでくれているのを確認した。

 翌日、25日に埼玉医大に付き添い医師の見解をきく。兄からは3時からの予約とずっと聞かされていたのだが、医師からは血管外科の外来は3時までで、3時からの予約は有りえないということだった。兄は3時からといわれた、予約票にもそう書いてあったとずっと主張していたが、後で確認すると予約票は13時となっていて、ようは13時を3時と誤認したということだった。なんだかあっつう間に認知も進んでいるのかもしれない。

 医師の見解は入院治療は、前回切断した右足親指の部分の状態が思わしくないので、もう少し手前部分も切除の可能性があること、さらに左足親指にも壊死が認められるので切断する。それ以外の入院治療はないとのことだった。

 左足親指の切断については緊急性はあるのかと聞くと、それは調べないとわからないとのことだったが、医師の知見としては予防的な部分も含めて早め切断した方がいいということだった。さらにもともと病因は糖尿病による下肢動脈血管障害なので、血管外科としては対処療法として壊死部分の切断等行うだけで、病気自体を治すことは難しいということだった。もし別の病院で壊死部分だけを切除するという対応をとるなら、そちらでやってもらうことでいい、あくまでここでは切断手術を伴う入院措置だという。

 正直、目の前が真っ暗になる思いだった。右足の親指切断だけで歩行や起居動作に影響が出ている状況では、さらに片側の親指を切断したらどうなるか。間違いなく歩行は難しくなるし、独居での生活は困難だ。出来れば左足親指の切除は遅らせることができればそれにこしたことはない。出来ればその間に、老健施設などの施設を探すとか、現在のエレベーターなしの5階住居から低層住宅に引っ越しさせるなど、すべきことをしなくてはいけない。

 診察後は兄を家まで送り兄と少しだけ今後のことについて話をする。その間に兄の着ていた衣服を洗濯して干したりする。結局、どこへ行ってもこういう家事仕事をしている感じだ。翌日、埼玉医大の医師の話を透析を受けている病院に説明するため自分も行くことに決めた。透析については兄は送迎バスもあるので、直接透析センターに行ってくれればいいとのことだった。

 そして今日、透析センターに行くと兄はまだ来ていない。なんでも玄関で転んでなかなか立てないので送迎バスに乗れなかったということらしい。そこで家まで行き、結局兄を乗せて透析センターまで送る。そこで看護師に前日の埼玉医大での話をする。担当医師が今日は来ていないので、土曜日に再度医師に説明をして欲しいとのこと。そのうえで医師の判断で入院措置を決めていただけるかもしれないという。

 とにかく現状では週3回の透析に自力で通えない。その都度自分が兄の送迎を行うのも不可能。となると、以前のように時間をかけても自力で通院ができる程度までに回復するまでは入院治療をしていただく。そういう方向で進んでいけばいいと考えている。

 しかし仕事をやめて少しずつでも自分の時間を作りたいと思っていたのに、多くの時間を兄のために費やすことになってしまっている。正直、今の状況だと仕事をやめていなければとても対応できないだろうと思うくらいになっている。どうしたらいいのかと思う部分と、とにかくなんとかしなくてはという切迫した思い。

 兄のケアマネに連絡して、先日受けたという介護保険の更新時の調査とその結果の再認定について、もし介護度が変わらないようであれば区分変更を依頼した。兄は現在要介護度1となっている。しかし一種一級の障害者で要介護3の妻を15年みてきている自分からすると、兄の状態は妻以上に悪いと思える。とにかく車椅子に乗せても一人でそこから立ち上がれないくらいに弱っている。歩行、起居動作が緩慢を通り越してほとんど難しい状態になっている。おまけに片目は失明、視力がある方も白内障等の影響で視力も相当に落ちている。そして度重なる誤認はまちがいなく認知症もすすんでいる。

 今の介護保険では介護度の認定基準もじょじょにハードルが上がってきている。ちょっとでもできる、自助可能と認定されれば介護度は落とされる。妻も認定調査で介護度が下がったことが何回かあった。しかし病状が改善されないこと、ようは専門の医師から治らないと明言されているのに、国の基準が変わったという理由で介護度が下がるのは納得できないと、その都度区分変更を申し立ててきている。妻に関していえば、病状は改善されない、そのうえで加齢から状態は悪くなっていく。それでも介護度が上がるどころか下がることは認められないというのが、自分のスタンスでもある。

 まあそういう部分を別にしても、兄の状態をみていると介護度があがらないと本人の独居で生存にも関わるようにしか思えない。