【特別展】 竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス - 山種美術館
重要文化財、竹内栖鳳の『班猫』はいつか観たいと思っていた。今回、約4年ぶりに公開となるというので山種美術館に行ってみた。リタイア後の美術館巡りの第1回がこちらということになる。
山種美術館は国内私設美術館としては、収蔵名画の点数で根津美術館と一二を争うのではというくらいに充実している。前回、行ったのはたしか2017年で上村松園と美人画の企画展だったと思う。
日本画は保存が難しいため、常設展示でも展示替えは頻繁に行われると聞いてるけど、山種美術館はその豊富な収蔵作品のため、いつ行っても新しい発見がある。
今回は竹内栖鳳の動物画を中心にさらに栖鳳と所縁のある画家、またそれ以外の大家の主に動物画が展示されている。栖鳳以外では西村五雲、奥村土牛、速水御舟、山口華楊、横山大観などなど60点余り。
竹内栖鳳は円山派、四条派を明治期に受け継いだ京都画壇の総帥ともいわれる大家で、東の横山大観、西の竹内栖鳳とも称せられた。京都画壇の技法を受け継いだだけでなく、西洋絵画の表現を積極的に取り入れ日本画の近代化を進めた。その門下から土田麦僊、小野竹喬、上村松園らが輩出した。
今回の目玉となる『斑猫』は重要文化財にも指定されている作品。猫を描いた日本画といえばこれというくらいに有名でもある。とにかく毛並みの表現、毛の一本まで微細に描く細密な描写は写実表現の極致のようでもあるが、この絵は単なる写実の技だけの作品ではない。なんていうのだろうか、生き生きとした猫を描きつつ、猫に持っている様々なメタファー的なもの、記号としての猫とでもいうべきものを総て凝縮し、内包しているように感じる。猫的なもの総てがこの絵の中にあるみたいか。
写実が写実を超えてイコンとなるような、そういう絵画が、名画が持っている普遍性さえもが感じられてしまう。
『斑猫』以外の栖鳳の動物画をみていくと習作的なものを除けば、この画家は晩年になっても若々しいというか、みずみずしい感性を表現しているものが多数ある。以下の2点はいずれも昭和12年頃で、栖鳳はすでに70を超えているのだが、とにかくみずみずしさを感じさせる。筆致、表現に老成した部分がないように思ったりする。
そのほかの画家の絵ではすばらしい作品が多数あるのだけど、『斑猫』に比べるととどうしてもインパクトが弱いようにも思ったのだが、そのなかではやっぱり横山大観は比肩できるものがあると思ったのがこの1作。