最後の現場仕事

 昨日も夕方ちょこっと会社に行った。私物の整理はだいたい終わっていたのだが、株主総会用に幾つか資料をプリントアウトする必要があった。行ってみると後任を務めることになる者が出社している。聞けば配当やらなんやらの手続きと、資料読みだとか。ここのところ連日、遅くまで仕事をしているし、これはもう残るも地獄ということだ。

 そして今日もまた自分は出社。後任者はまだ来ていない。こちらは最後の私物整理をして、不要なものを捨てたりとか。その後、NASにたまっているFAXの注文書をプリントアウトして整理。まあ明日4日分やるより、少しでもやっておくほうがいいことはいい。それから補充用の一覧注文書をピックアップして、入力しピッキングリストにする。昔は4連休などというと、かなりな量のFAX注文があったのだが、今は本当に少なくなっている。それでも4~5件分くらいはあったか。

 そうこうしているうちに後任者も出社。彼は前日に引き続き、引継ぎ資料の読み込みとかをやるようだ。自分は自分で作ったピッキングリストをもとに倉庫に行き、最後の出品をやる。なんていうのだろう、もともと40年前に書店に入って最初にやった仕事は品出しだ。入荷した商品をそれぞれのジャンルに分け、棚や平台に陳列する。本を扱う仕事とはいえ完全な肉体労働だ。

 そして今日自分がやろうとしているのは、倉庫から書店の注文分を出品する仕事である。これもまた完全な肉体労働だ。本の仕事は肉体労働で始まり、肉体労働で終わる。途中、管理職やら経営やら諸々あったにしろ、結局自分は本をその重さを内容ではなく、物理的な量としての重さで実感する仕事で始め、そして終えることになる。

 出品していても、なじみ深い書名、著者の数々を目にし、手にしていく。読んだ本もあれば、まったく関心のないものまで。外文はピッキングリストの署名や、棚札の署名を見れば即座に著者が浮かんでくる。昔、多分1500点くらいの本の署名をいわれれば、即座に著者をそらんじることができた。もちろんその半分も多分読んではいないけど、けっこう読まなくても、なんとなく読んだ気になっている本が多数あった。

 運動不足もあるし、年齢的にけっこうしんどい部分がある。全部で500冊前後抜いて台車3台分でけっこう息が上がった。昔は1500冊とか2000冊くらいは割と簡単だったのに。まあこれが年齢ということなのかもしれないね。

 連休明けは他の注文が殺到するので、書店の補充系は割と後回しになることが多い。かといって処理が遅れれば、当然書店への到着が遅くなる。そうなれば棚はガタガタになり、他社の書籍がそこに入り込んでいく。書店での売り上げを伸ばすには、とにかく棚や平台のシェアを増やすこと、それに尽きる。少なくとも販売力のある大書店では、いまだにこの棚シェアを増やすことが一番簡単な方法だ。

 そういう意味では補充注文は出来るだけ早くに出荷すべきではあるのだ。昔、どこかの出版社が、大型書店への販促としてよくやっていたことだが、月曜の午前中に書店訪問して欠本補充を行い、注文をとる。戻ったらすぐに注文書の整理を行い倉庫に品出しをさせる。そしてそれを取次に出すのではなく直送する。そうするとだいたい書店には木曜か金曜には到着する。繁忙期の土日にはきちんと棚に自社の本が入っているとそういうやり方だった。

 送料のこととか諸々あるのだが、これをやると確実に書店の棚の自社スペースが広がったいく。本が売れていた時代にはこういうやり方がありだったのだ。とにかく販売力のある大書店に本を沢山置いてもらえば、それだけで売上が伸びた時代だったから。

 本の売れない時代、本が死にゆく時代にあってはこういうやり方も多分あまり効果があがらないのかもしれない。さらにいえば、多くの出版社がすでに大書店との直取引を開始してもいるから、目新しいものではないのだろう。

 いろいろと思うことはあるが、とりあえず自分のキャリアの最後の最後に、本を実際に手にとるピッキング作業を行えたのは、満更でもないような気がする。ほとんど自己満足ではあるが、4連休明けということでいえば、少しは現場の役に立ったかもしれない。

 自室に戻ると後任者から退職金の税金の処理とかの質問を受ける。それで5~6期前の帳票を保管している別棟にいき住民税の一括徴収の帳票とかをひっくり返す。まあ現物にあたるのが一番教えるのにも、また教わる側もよくわかる。以前は一括徴収は紙の帳票を使っていたが、今はそれが銀行のWEBサービスになっている。でも原理は一緒なので、明日WEB上で確認するようにと話した。

 久々、体を動かしたのでそこそこ心地よい疲労感みたいな感じで帰宅。帰宅しても当然なにもされていないので、すぐに夕食の支度をする。

 さてと、明日はいよいよ株主総会。そしてひま~な、ひま~な、リタイア生活が始まる。