2016年出版界回顧

 今日は仕事始め。そこそこに繁忙感のある一日だった。
 年末に読もうと思ってそのままにしていた新文化の2016年出版界10大ニュースを改めて読んでみた。

1.太洋社が事故廃業から一転自己破産
 芳林堂書店破産による不良債権が引き金
2.書店のM&A資本提携相次ぐ
 大手取次会社も書店買収・提携へ
3.新取次「大阪屋栗田」が誕生
 大阪屋が栗田を吸収統合、社長に大竹氏
4.熊本地震で書店が被災・休業
 出版社・取次など業界横断で支援
5.「週刊文春」がスクープ連発
 「週刊文春デジタル」読者2.5倍に
6.”雑誌読み放題”に憂慮の声
 紙版の販売部数落ち込みに影響
7.メジャー雑誌休刊相次ぐ
 休刊116点、前年超えほぼ確実
8.初の12.31「特別発売日」
 新たな市場創出なるか注目
9.「文庫X」全国650店に波及
 さわや書店フェザン店が仕掛ける
10.教科書発行社が謝礼問題
 学校関係者に教材無償提供

 太洋社は正直、秒読みに入っていて、いつ来るか、いつ来るかみたいな感じではあった。当初は自主廃業ということで、「債務をすべて支払っても7億以上残る」という説明もあった。ようは債務超過ではないということだ。しかしそれから36日後に自己破産を申請した。その引き金となったのは、2月に芳林堂書店が自己破産したことによる不良債権8億余りの影響が大きかったという。太洋社の業績が急速に悪化したのも、主要取引先の芳林堂の支払いが滞ったことによるともいわれた。
 2月末からの数週間の混乱はひどいものだった。太洋社は当然芳林堂へのストップした。太洋社一手でやっていた芳林堂の店舗はどうなったか。細々と営業を続けてはいるのだが、新刊が入らない。それ以前に雑誌が入ってこない。棚もガラガラ状態のままで営業を続けていた。結局、事業をアニメイトに譲渡し、多くの店舗がそのまま営業を続けた。芳林堂の従業員がその後どうなったかはわからないが、悲しい話だ。譲渡継承先を探しながら、自己破産し買い付け金を焦げ付かせた。それが太洋社破綻の直接の原因になった。太洋社としていえば恨み骨髄かもしれない。とはいえ、芳林堂の経営状態を掴んでいながら、売掛回収を怠ってきたのは経営的にどうか、あまりにもリスク回避ができていなかったのではないかとも。
 とはいえ、出版取次なんてだいたいがそんなものだったかもしれない。出版社と書店との間で物流と商流を担う取次の利ざやは薄い。八分口銭とはよくいわれたが、書店へのバックマージンや、高正味出版社の商品を扱っていると、ほとんど逆ざやみたいになる可能性もあった。2001年に倒産した人文社会科学系専門取次の鈴木書店はまさにそうで、高正味出版の扱いと大書店や大学生協への統一正味やバックマージン等により利益率はほとんどない状態で、累積赤字を増やした挙句の果ての破綻だった。
 それ以降はというと、神田村の小さな取次はじょじょに店を畳んでいった。親和会、明文、樋口書店などなど。最近でも東邦書籍も破産だか廃業したと聞く。そしてなによりも去年の栗田の破綻。栗田は今年大阪屋に統合され大阪屋栗田となったが、その大阪屋でさえ確か2012年だか2013年に経営危機となり、大手出版社のテコ入れで再生された。今回新会社のトップとなった大竹氏も確か講談社出身である。しかし、大阪屋と栗田の統合はどうしても弱者連合のイメージがある。
 取次がつぶれる。しかも頻繁にである。それはもう紙媒体の本や雑誌の旧来ビジネスモデルが成立しないことなのかもしれないとも思う。ネットや電子出版のせい、いやいや、もう紙媒体によって情報を、娯楽を得るということを人々がかってほど必要としていないということなんだろう。それでは本は死滅するのか、それはないと思う。多分、嗜好品として生き残るだろうし、紙媒体というメディア自体も生き続けるとは思う。ではなにが変わったのか、マスメディアとしての、大量出版という商品が成立しないということなんだろうと。