東京富士美術館へ行く

 家から一番近いかどうか判らないけど、多分一番行きやすい美術館の一つである東京富士美術館にふらっと行ってきた。前回行ったのは7月だからそれほど時間があいていない。

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 企画展はまず「ダ・ヴィンチ没後500年『夢の実現』展」。

 東京造形大学とのコラボレーションで、ダ・ヴィンチの欠損した作品、未完成作品など16点を科学的根拠に基づいて復元した作品を展示したもの。コンピュータ技術によるシミュレーションなどヴァーチャル技術を多数応用していて、楽しい企画ではあるのだが、いかんせん展示してある作品は複製プリントアウトなので今ひとついえないでもない。

 できればこれに大塚国際美術館で展示しているような陶板複製画を作って展示できれば、相当にクオリティの高いものができたかもしれない。ただし制作費など、費用面はかなり跳ね上がることが予想されるので、これは詮無い話かもしれない。

 ダ・ヴィンチは発明家としてだけでなく、当然のごとく画家としても最高峰として評価されている。技術、技法その他もろもろからでもあるし、『モナリザ』は西洋絵画の中でも燦然と頂点に立つ作品ということになる。とはいえ、まあ好き好きもあるし、自分はというと実はダ・ヴィンチの作品にさほど食指が動くほうではない。ようは審美眼が足りないのかもしれないけど。なんならラファエロのほうが楽しめるような気もしないでもないし、まあルネサンス絵画はそこそこに好きみたいなレベルだ。

 なのでこの企画は割とスルーというか、じっくり眺めるということはしなかった。まあ入館したのが3時少し過ぎ、おまけに入る時には酷い雨で、いったんカミさんを入り口付近で下ろしてから駐車場に車停めにいったとか諸々あったので、なんとなく常設展からこの企画展の流れではあまり絵画鑑賞みたいな雰囲気ではなくみたいな感もあったりして。ようはあんまり余裕もなかったのか。

 その後、もう一つやっていた企画展の方に回ってからようやく落ち着いた雰囲気で作品に接したような気がした。

 『THIS IS JAPAN IN TOKYO 永遠の日本美術の名宝』展

 この企画展は当初、春先に予定されていたもので新型コロナウイルスの影響で順延になっていた。富士美の日本画のコレクションは、西洋美術に引けを取らないくらいに充実しているという話は以前から聞いてはいたのだが、これまでそれをこの美術館で観ることなくきていた。

 唯一、2017年に金沢にある21世紀美術館に行った時に、なぜか富士美の日本画コレクション展をやっていて、その質、量にけっこう驚いた記憶があった。いつか富士美できちんと観てみたいと常々思っていた。なのでこの企画展は楽しみにしていた。

 この企画展は2019年に京都文化博物館で開かれた『百花繚乱 ニッポン×ビジュツ展』のために貸し出された作品90点の里帰り展ということらしい。企画内容としては「キモカワ×日本ビジュツ」、「サムライ×日本ビジュツ」、「四季×日本美術」、「黄金×日本美術」、「デザイン×日本美術」、「富士山×日本美術」という7つの切り口から絵画、浮世絵版画、漆工、刀剣、武具甲冑などの名品を展示している。

 展示期間には前期(9/1〜10/18)と後期(10/20〜11/29)までとある。まあこのへんがけっこう曲者で例えば伊藤若冲の人気のある『象図』は後期展示だったりもする。逆に応挙の可愛らしい『狗子之図』は前期展示とかもある。まあいずれにしろこれだけの展示作品だけに、出来れば二度三度と足を運べるものな運びたいところだ。

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狩野尚信『猛虎図』

 これ多分、以前どこかで観ている。多分、金沢の21世紀美術館だったと思うが、可愛らしいユーモアのある虎の想像図である。おそらく中国の画からの借用されたイメージなんだろう。狩野尚信は狩野探幽の弟で江戸狩野の一人なんだとか。正直、日本画はまだ学習途上で狩野派琳派もこれからっていうところだけど、この絵の良さはわかる。余白とのバランスも面白い作品。

 

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円山応挙『狗子之図』

 子どもの時の感覚でいえば応挙は幽霊図、最近だとこの手の可愛い動物図みたいな感じ。応挙は子犬を初めて主題にしたといわれているらしいけど、コロコロとした子犬の可愛らしさをよく表現しているし、多分に相当な犬好きだったのではないかと勝手に想像している。

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土田麦僊『紅葉小禽』『雪中梅

 美しい、ただただ美しい作品。自分の中では土田麦僊というと大胆な構図やおおらかな面でとらえた人物像など、ゴーギャンルノワール日本画に翻案したみたいなイメージがあるのだけど、これはもう正統な日本画である。ただひたすらに美しい。

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横山大観『春秋』

 これもまた美しい作品。大観はそれこそいろんな顔というか、様々な技法、題材による表現があるが、この作品のように余白を多くとり、輪郭線なしに見事に季節の様を描き出す。なんかしらんがこの作品を観ちゃうと、大観が全部もっていくみたいな感じがする。

 最後にこれも富士美コレクションの人気作品。もちろん北斎である。

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葛飾北斎『山下白雨』

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葛飾北斎甲州石班沢』

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葛飾北斎『神奈川沖浪裏』