お盆明けくらいだったか、Ipodで「In the Still of the Night」を聴いていた。自分には愛聴盤の一つである「charlie Paker the cole porter songbook」に収録されている。これはウィズ・ストリングスやビッグ・バンドと共演したパーカーの演奏でコール・ポーターの曲を集めたコンピ盤である。その中でコーラスと共演した「In the Still of the Night」は愛すべき名演奏だと思っている。
これは確か20代の頃に入り浸っていた野毛のダウンビートでかかっていたもの。気に入って何度もリクエストしてたら、店主の安保さんが空いている時にはこっちがリクエストしなくてもかけてくれるようになった。そういうアルバムが何枚かあって、ステファン・グラッペリ、コールマン・ホーキンス、グレン・グレイ&カサ・ロマ・オーケストラ、ハリー・ジェームズなんかを代わる代わるかけてくれた。
まあだいたい一番遅くまでいて、客がほとんどひけた時間帯だったということもあるのだろう。マスターはたいへん親切な方だったが、時にこちらが寝落ちしてもけっして起こすことなく、店の片づけが粗方終わるまでは寝かしておいてくれた。なので、そういう時はタクシーで帰ることが多かった。別に閉店の時に起こしてくれれば家には帰れたんだけども。
当時、神保町の会社に勤めていたこともあり、昼休みや仕事が早く終わった時には中古レコード店巡りをしていた。当然「charlie Paker the cole porter songbook」も買った。ずっとそれを聴いていたのだけど、21世紀になったどこかでオーディオをPCに繋いでLP盤をデジタル音源にするとか何枚か試みた。えらく時間がかかるのですぐに飽きてしまったのだが、パーカーのレコードは真っ先にパソコンに入れてからCDに焼いたし、iTunesにもいれた。
先日もiTunesで聴いていて、何気に「In the Still of the Night」で検索かけると、この録音実は7テイクもあることがわかった。パーカーのテンポアップした演奏にコーラス隊がついてこれていないようで、途中で終わったテイクが多いということらしかった。
YouTubeにけっこう別テイクもアップされているので聴くことが出来るのだが、どうせならCDできちんと聴こうと思いポチっとしたのが上記のアルバム「Charlie Parker Big Band」だ。まあ全盛期を過ぎたパーカーの企画モノといってしまえばそれまでなんだが、自分は彼のウィズ・ストリングスやビッグ・バンドもの嫌いじゃない。逆にこの手のリラックスした(手を抜いた?)演奏の方がパーカーらしさがあるのではみたいなこと思ったりもしている。随所にはパーカーらしきキレやテンポアップされたフレーズもうかがえるし。
ウィキペディアには細かいリストやパーソナルもある。ビッグバンド系のミュージシャンとそれに混ざるような形でパーカーのいつものメンバー、レイ・ブラウン、チャーリー・ミンガス、マックス・ローチ、バディ・リッチなどの名前も見える。アレンジはジョー・リップマンとギル・エヴァンスだ。
Big Band (Charlie Parker album) - Wikipedia
- "Temptation" (Nacio Herb Brown, Arthur Freed) – 3:33
- "Autumn in New York" (Vernon Duke) – 3:31
- "Lover" (Lorenz Hart, Richard Rodgers) – 3:08
- "Stella by Starlight" (Ned Washington, Victor Young) – 2:58
- "Dancing in the Dark" (Howard Dietz, Arthur Schwartz) – 3:16
- "Night and Day" (Cole Porter) – 2:52
- "I Can't Get Started" (Vernon Duke, Ira Gershwin, Thad Jones) – 3:10
- "What Is This Thing Called Love?" (Porter) – 2:39
- "Almost Like Being in Love" (Alan Jay Lerner, Frederick Loewe) – 2:38
- "Laura" (Johnny Mercer, David Raksin) – 3:09
- ”"In The Still Of The Night [Take 7 / Master]" (Porter) – 3:28
- "Old Folks" (Dedette Lee Hill, Willard Robison) – 3:38
- "If I Love Again" (Jack Murray, Ben Oakland) – 2:38
Bonus Tracks; Issued on the 1999 Verve CD Reissue, Verve 5598352
- "In The Still Of The Night [Take 3 / Complete]" – 3:53
- "In The Still Of The Night [Take 4 / Complete]" – 3:31
- "In The Still Of The Night [Take 6 / Complete]" – 3:36
- "Old Folks" – 4:12
- "Old Folks" – 3:37
- "Old Folks" – 3:41
- "In The Still Of The Night [Take 2 / Incomplete]" – 1:27
- "IIn The Still Of The Night [Take 5 / False Start]" – 0:45
- "Old Folks" – 0:46
- "Old Folks" – 0:39
- "Old Folks" – 0:29
こうやって別テイクや失敗テイクを聴き比べてみると、コーラス隊の苦労というか、四苦八苦しているのが物凄くわかる。テイク6からテイク7のマスターにかけてでコーラス隊も疲れもあって妙に力が抜けてきているようにも思える。そしてどのテイクでもパーカーはパーカーだ。どのパートでも飄々と吹いている。キレとメリハリはマスターテイクかもしれないが、その前のテイク6が意外とというか、一番コンボっぽいパーカー節が聴けるような気もしないでもない。
失敗作を含めた別テイクを集めるのはうっとおしいとかいろいろと意見もある。特にパーカーのアルバムにこういう短い別テイク集めたものが多い。良し悪しあるので一概にはいえないけど、このBig Bandに関していえば面白い試みかなと思ったりもする。パーカーに合わせるのは相当な技量が必要なんだということもわかる。パーカーはいつもマイペースだから。
なんだか本当に久々にパーカーを聴いたような気がする。こうなったら持ってるCDを片っ端から聴いてみるか。あるいは村上春樹のいう「チャーリー・パーカ・プレイズ・ボサノヴァ」を探してみるか。運が良ければ中古レコード店の片隅に眠っているかもしれないし。