茨城県近代美術館へ行く

 最終日は日光を早々に後にして水戸に足を伸ばす。ここ何回かは日光に宿をとったときは必ずこのパターンで水戸の近代美術館へ行くことにしている。ここは仙波公園の一角にあり環境も良い。収蔵作品も洋画ではクールベやモネ、シスレールノワールなどの名品がある。さらには茨城に縁のある画家の作品が多数収蔵されている。洋画では中村彝の作品が多数あり、日本画では水戸出身の横山大観が有名である。

 とくに一時期岡倉天心横山大観らが立ち上げて日本美術院が茨城の五浦に移転していたことなどもあり、横山大観菱田春草らの作品も多数ある。

 雰囲気もよくゆったりと絵を観ることができる場所なので、自分的にも大好きな美術館の一つで、多分もう3〜4回は訪れているのではないかと思う。

 今回の企画展はというと「名作のつくりかた」という直球勝負。名作をモチーフ、画材、素材、表現方法など様々な角度から取り上げている。

次回企画展 | 展覧会 | 茨城県近代美術館 | The Museum of Modern Art, Ibaraki

 特に日本がにおいては完成作品と大量の下絵から読み解いていくのが興味深かった。ただしなんとなく学習的要素が多く、作品を注視するため、正直疲れる部分もある。少なくとも芸術作品をリラックスして楽しむということはできない。どこか緊張感をもって接するような感じか。まあそれもまた芸術鑑賞ではあるのだが。

 展示作品の中ではもちろんこの美術館の目玉ともいうべき横山大観の「流灯」や中村彝の静物画などがメインにあるのだが、中村義孝のブロンズ象もどこか心をざわつかせる魅力あふれる作品だった。ふだん、あまりブロンズ像には興味をもたないのだが、これはちょっと観る者にインパクトがある作品だったと思う。多分、それはエロティシズムとかそういうのとは別の部分ではあるのだけど。

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中村義孝「南風」

 ワンピースを着た少女が風を受けてたなびく髪の毛という、そういう一瞬を切り取った作品なのだけど、これが側面から見るとこういう感じなのである。

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 そう目が描かれているのね。この顔の表情が、目を描くことによってどことなく虚無的というか人生に倦むような、なにかそういう微妙な雰囲気となっている。単に風を受けてというような風情とはまったっく違うような印象なのである。これはちょっとヤバいものがあるなと、なんというか芸術は一筋縄ではいかないというような印象をもった。

 3時間ほど、この美術館で贅沢な時間を過ごせた。お盆休み、コロナの影響もあるのだろうか、閑散とした美術館では時間もゆっくりと過ぎるような気がする。