ポーラ美術館「モネとマティス-もうひとつの楽園」

 で、美術館再訪第三弾としてポーラ美術館に行ってきました。

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 大好きなモネの作品との再会、そしてここ数年嵌っているマティスである。これは行かない訳にはということで日帰りで行ってきた。今回はカミさんだけでなく子どもも付いてきた。最初何処へ行くか聞いていなかったので、都内の美術館だと思っていたようで、箱根は日帰りで行くとこではないと宣っていたけど。

 一昨日行った西洋美術館と共に、ポーラ美術館は自分にとってはベースになる場所。上野西洋美術館、ポーラ美術館、東京富士美術館の三つは国内でも有数の西洋名画を収蔵しているところでもあり、月替わりで通ってもけっして飽きさせることはないと思う。

 今回はモネとマティスという企画展。それぞれの製作現場、モネの庭とマティスの室内という視点から作品を展示している。モネとマティスは豊富な収蔵作品からポーラ独自だけでのもけっこう切り口としてはいける企画展だが、各地からの貸し出しもあり、モネ、マティスともに国内の美術館、画廊からの貸し出しも多数ある。とはいえコロナ禍の影響で、出展が予定されていて取りやめになっていた作品もかなりあるようで、それをポーラの収蔵作品で関連付けができる名画で埋めているという感じもした。

 まずはポスターにも描かれている看板作品が来ていない。これね。

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『トルコ椅子にもたれるオダリスク

 館内を一周してからこの作品を観ていないことに気づいて監視員さんに思わず聞いてしまったくらい。カラフルな色使いで傑作とも思える作品なんでこれは残念な感じ。なんでもこの作品はパリ近代美術館収蔵品だとか。到着が遅れているのか、あるいは貸し出し中止になったのかはさだかではないけど、コロナの影響はこういうところにも出ている。

 マティスを中心とした企画展は初めてなので、30点近い作品が展示されているのは一種感動ものともいえる。気に入ったものを幾つかあげていくと。

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『赤い室内の緑衣の女』(ひろしま美術館所収)

 これは国内ではポーラ所収の『リュート』と双璧をなす傑作だと思う。装飾的で多彩な色使いはマティスの最盛期の作品だと思う。

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リュート(ポーラ美術館所収)

 そしてマティスの裸婦が圧巻である。

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『赤い背景の裸婦』(みぞえ画廊所収)

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『横たわる裸婦』(ポーラ美術館)

 いずれもオダリスクを題材にしている。マティスの表現はデフォルメ化されることなく、陰影による凹凸の表現は十分に官能的でさえある。かといってこれらの作品がポルノかといえば、これは十分に芸術に昇華されていると思う。この美しさは天才画家の眼差しによって見いだされキャンバスに写し取られた異次元のものだと思う。

 同じ裸婦の関連としてルバスクオダリスクが展示されている。美しい、とほうもなく美しい絵なのだが、この作品は多分ポルノと芸術の境界線上にあるようにも思えた。ラファエル・コランの『フロレアル』で感じたような感覚。それはひょっとしたら見る側の自分の凡庸さに起因するものかもしれないけど。

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バスク『横たわる裸婦』

 モネの作品では、特にポーラ所収では太鼓橋のある睡蓮とか『つみわら』が好きである。国内では埼玉近代美術館も『つみわら』も所収しており、今回の企画展にも貸し出されているが二つを比較すると断然ポーラの『つみわら」がいいように思える。まあこれは完全に個人の感想だけど。

 一昨日行った西美のロンドン・ナショナル・ギャラリー展にも太鼓橋のある睡蓮の絵があり、ポーラのそれを思い出したのだが、改めて比べてみるとこんな感じで、ほとんど同じ構図で多分描いた時間による陰影や明るさの相違があるだけという感じがした。

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ポーラの「睡蓮」とロンドンの『睡蓮』

 あと、西洋美術館常設展のモネの部屋になかった『セーヌ河の朝』『柳』がこちらで観ることができたのはちょっと不思議な感じがした。