ウインド・リバー

 

ウインド・リバー(字幕版)

ウインド・リバー(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: Prime Video
 

 

 これもプライム・ビデオで観た。これはけっこういい、傑作の部類に入ると思う。寒冷の地ワイオミングのインディアン居留地(先住民といわなくていけないのか)を舞台に起きた殺人事件の真相を追うミステリー。

 主人公は野生生物局の職員でハンターの男、犯罪捜査のためにやってきたFBI女性捜査官をサポートする。そして先住民居留地では独自の捜査権をもつ部族警察というのがあったりしてややこしい。

 雪深い地でのミステリーということでは最近観た『スノー・ロワイヤル』を思い出し、女性捜査官ということではなぜかコーエン兄弟『ファーゴ』を連想したり。あの身重の捜査官を演じたフランシス・マクドーマンドはベスト・アクトだったな。

 ハンターを演じるジェレミー・レナーの抑制された演技は渋くて、こういう武骨だけど仕事はきっちりやるタフガイって、多分アメリカにはけっこういるんだろうなと勝手に思う。このへんはジョン・ウェインが連綿と続く西部の男ロールモデルか。あるいは、これは『スノー・ロワイヤル』で主役を演じたリーアム・ニーソンにも通じるのだが、多分この人たちはきっと元海兵隊で、愛国者で、家族と国と故郷を愛する良きアメリカなんだろうと適当に思ったりもする。

 ストーリー的には雪深い荒野で見つかった少女の死体。直接の死因は凍死ながら、複数人によってレイプされ、逃げる途中で雪の中で死んだため、殺人事件として捜査が開始される。犯人は割と簡単に推測されちゃうのだが、雪深い地での自然の驚異と、先住民居留地という複雑な状況が複層的に絡み合っていくというお話。

 先住民居留地の抱える様々な問題への理解がないと、しっくりこない部分もある。もともとは西部開拓によって追いやられた先住民たちが、強制的に移住させられ、一定の自治権はあるがいかんせん辺境の地で産業もなく、閉塞した状況の中での生活を強いられる。その中での様々な社会問題や犯罪とかが低層にある。

インディアン居留地 - Wikipedia

 そうした背景をもったうえでのクライム・ミステリーだけに重苦しい雰囲気に包まれた映画だ。さらには雪深い地での閉塞感が過重化される。その中での救いはといえば、厳しい自然の中で、自然と対話するような生き方をする主人公のハンターの人間性なのだが、その彼も辛い過去を背負っている。

 静的な雰囲気に包まれた落ち着いたドラマでもある。割とこういう映画は嫌いじゃない。まあしいていえば、最後の活劇的な撃ち合いとか犯行に至るまでの再現とかはもう少し映画的省略を使ってもよかったかなと思う。

 この映画はかなりポイントが高い。