カーク・ダグラスが死んだ。
103歳、大往生だと思う。ハリウッド黄金期のスターのほぼ最後の一人かもしれない。盟友だったバート・ランカスターは20世紀のうちに亡くなっている。彼と同時代のスターのほとんどが鬼籍に入っているのではないか。活躍した時期は50年代から60年代だ。
カーク・ダグラスというとあの特徴的な割れた顎が思い出される。あと鍛え抜かれた肉体美の印象も強い。そのへんは『スパルタクス』や『バイキング』の影響もある。そしてなぜかアクション系の俳優という印象も強いが、けっこう演技派でもあったし、そういう映画にも出ている。
覚えているところでは、『ガラスの動物園』、『探偵物語』、『炎の人ゴッホ』なんかか。しかし、ウィキペディアを見ていると本当に長いキャリアの人だ。そしてこの人の主演映画をかなりの数観ている。それだけ思い入れがある人でもある。
古くは『三人の妻への手紙』『チャンピオン』、『海底二万哩』『OK牧場の決闘』、『ガンヒルの決闘』、『テレマークの要塞』などなど。比較的新しいところでは、なんでこんな役受けたんだろうという『スペース・サタン』、そして『ファイナル・カウント・ダウン』まで。
本当に芸歴が長い。アクション俳優、肉体派みたいなことで大根と称されることも多いが、けっしてそうではない。しかしオスカーには最後まで縁がなかった。個人的にはゴッホを演じた『炎の人ゴッホ』あたりで主演男優賞に輝いてもよかったのではと思うこともある。
推測するには、早い時期から独立プロを作って映画制作を始めたり、レッド・パージで干されていたダルトン・トランボに活躍の場を与えたり、才気ある野心的な若手スタンリー・キューブリックを登用するなどのプロデューサー活動が、ハリウッドのメイン・ストリームから嫌われたのかもしれない。
彼の息子、マイケル・ダグラスもすでに70代と聞く。子どもの頃からカーク・ダグラスの映画を観てた者からすると、なんとなく生暖かい目でマイケルを観ていた時期もあるのだが、息子の方はとおにオスカーを受賞している。
カーク・ダグラスと同時期に活躍していた主演クラスというと、最初にあげたバート・ランカスター、チャールトン・ヘストン、トニー・カーティス、スティーブ・マックウィーン、ロバート・ミッチャムあたりか。みんな、みんな死んでしまったのだと思う。20世紀は遠くなりにけりだ。