新聞記者を観る

 5時で終了したMOMATの後、さらに時間が空いてるのでさてとどうするかと思案。普通なら鉄板で飲みに行ってしまうのだけど、なんとなくそういう気分でもない。なんとなく年齢のせいかもしれないね。

 それで話題になっている映画『新聞記者』でも観るかということになる。都内では何軒か上映館があるけど、埼玉だとなかなかやっていない。後で調べると大井のイオンで上映していることはわかったのだけど。それでスマホで調べてみると池袋でやっていることがわかる。時間も7時過ぎくらいから。なんとなくちょうどいい感じである。

 劇場はサンシャイン通りにあるシネコンHUMAXシネマズ。以前からその前を通ることはあったけど、入るのは初めて。驚いたのは窓口で初めてシニアかどうかと聞かれた。まあ63歳だし普通に「ハイ」と答えればいいだけのことだけど、なにせ初めてのことなんでちょっと戸惑った。

 自分で言うのもなんなんだが、割と童顔でだいたい年齢よりは10以上若く言われることが多いのでなんかそれに慣れてしまっている。とはいえ髪の毛は真っ白だし、60過ぎといってしまえばそのとおりなのである。まあ安くなるのだから有難いことこのうえない。

 そして『新聞記者』である。

 内容的には、事前にツィッターとかでもいろんな方が褒めていたこともありだいたいのことは知っていたつもり。東京新聞記者のスター記者望月衣遡子のノンフィクションを原案にしたもの。安倍政権の闇ともいうべき加計学園問題や、安倍のお抱えライターでもある山口敬之によるレイプ事件なども盛り込んだ、きな臭い内容でもある。

 内容が内容なだけに、ツィッターなどSNSでは評判を呼んでいるが、テレビなどではほとんど紹介されることがない。それでいて口コミを通じてそこそこのヒットをしているという作品だ。

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 主演は若手イケメン俳優である松坂桃李と韓国の女優シム・ウンギョン。この二人がとてもいい。松坂桃李という人気俳優が主演をやっているというのに、マスコミで喧伝されることがないということが、この映画の内容が現政権にとっては不都合な事実が満載であるということを物語っているのかもしれない。ちなみに松坂桃李の妻役には、人気女優の本田翼お出ている。普通なら松坂、本田が出ているというだけでそこそこ話題にならなければいけない。

 そして記者役のシム・ウンギョンである。まだ二十代前半の女優だが圧倒的な存在感だ。流暢に日本語をこなすのも凄い。役柄が帰国子女ということでじゃっかんカタコト風になるところもうまく消化されている。アップにも耐える表情豊かな女優さんだ。この人は性格俳優もいけると思う。それだけの演技力を25歳という若さで身につけている。

 どことなく上野樹里と似た雰囲気を持っていると思ったら、韓国でリメイクされた「ノダメ」の主演をしているという。

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上野樹里、シム・ウンギョンのツーショット

 映画はというと、内容のスキャンダラスな部分はなしにしても、面白い映画に仕上がっている。社会派ミステリーとしても十分いける。テンポのいい演出とシム・ウンギョンの圧倒的な存在感、松坂桃李の演技力によって、第一級娯楽作品に仕上がっている。

 要はただの社会派映画、政権告発映画じゃないということ。後半部分で若干ダレそうなシークエンスもあるにはあるのだが、ギリギリのところで破綻なくラストまで進む。そのへんは演出の弱さを主役の演技力が補ったといえるかもしれない。

 この映画はけっこう海外でもイケるように思う。まあ内容が内容なので韓国はいいとしても、中国ではちょっと上映が難しいかもしれない。ハリウッドではどうか、大ヒットという訳にはいかないだろうが、大都市圏だったらそこそこイケそうな気がする。一番いいのはイギリスやフランスあたりかもしれない。

 社会派告発映画とかそういう部分はとりあえず置いといて、面白い映画を観れたと思う。機会があればもう一回くらい観てもいいかもしれない。そのくらい主役のシム・ウンギョンが素晴らしい。

  映画が終わり、タイトルクレジットが全部終わり、館内が明るくなるときに数人が拍手をした。自分も当然のごとく拍手をした。映画で最後に拍手をするのは久々のことだ。それだけ良い映画だったということである。