スリー・ビルボード

 フランシス・マクドーマンドが2回目のオスカー主演女優賞を受賞した作品。寓意性、象徴性、ストーリーの意外な展開に次ぐ展開。そして観客の期待をまったく裏切るような不思議かつ尻切れとんぼのようなあっけない幕切れ。
 役者の演技はマクドーマンド、同じく助演男優賞を受賞したサム・ロックウェル、末期ガンに犯された人格者の警察署長役のウディ・ハレルソン等を中心に脇を固める俳優陣がみんな素晴らしい。
 どう評価すればいいのか、正直戸惑いつつスクリーンい引き込まれていくのだが、とにかくストーリー展開が小さな意外性の連続なのである。なぜこうなるというような設定、その中でマクドーマンド演じる女性と差別主義に囚われた警官を演じるロックウェルのみが奇妙なリアリティに溢れている。
 多分、二度観たいとはけっして思えない映画だが、この映画は素晴らしい。しかし興業的にどうだったんだろうとそんなことを考えてしまう部分もあるにはある。しかしアメリカにはこういう小品的な傑作を受容する不思議なインテリジェンスがあるのも事実。実はある種のブラック感あふれるコメディではないかと疑っていたりする。イニャリトゥの「バードマン」ばコメディであるとすれば、「スリー・ビルボード」も十分コメディではあるといえるのではないか。