新業態に挑む西村書店(兵庫県加西市)の闘い〜書店とコンビニが融合

新文化」6月7日号1面記事より

 兵庫県加西市で60年以上も営業を続けてきた西村書店。同店は昨年7月5日、コンビニとレジを共有する一体型店舗「ファミリーマート西村書店」にリニューアルした。書店とコンビニが融合する280坪の西村書店を経営する田中俊宏社長と、「経営レベルまで社内全員が、地域に本屋を残すことに理解を示す」と語るファミリーマート開発本部一体型開発部の藤村達也マネージャーの2人が話す経緯と展開は示唆に富んでいた。

 以下、コンビニと書店の相違として挙げられている箇所を引用抜粋する。

登録アイテムを3万点に絞り混んでいるコンビニのシステムに10万点以上にのぼる書籍の商品情報を格納するキャパシティはない。

 これを日販のデータベースがシステム改修にちょってコンビニレジでの書籍取り扱いを可能にした。
 コンビニと書店の在庫高の違いも明白で、コンビニは1店舗の在庫を5000万円弱に抑え、その金額を回してキャッシュフローをよくしていく。これに対して当時の西村書店には1億円以上の在庫があった。
 全体として書店の業務は非効率でマニュアル化に乏しく、品揃え、陳列その他を個人の経験に依拠した職人的な店員に依拠している。これに対してコンビニは効率性を追求し業務の標準化を求める。
 いつ客が来てもいいように「常にレジにるように」と社員教育する書店に対してコンビニは少しでも手が空いたら売場で前出しや品出し、掃除をするために「レジにいてはいけない」と教えている。この店舗運営の相違はなるほどと思わざるを得ないし、多分、書店経営者にとっては目から鱗かもしれない。
 ファミリーマート西村書店の売上は、書店単独時に比べて1.4倍強となった。客単価は6割下がったが、客数は2.2倍以上増加した。さらにコンビニ客の30%が本を買い、本を買いに来た66%がコンビニを利用しているなど、コンビニとの一体型書店はいままで本を買わなかったコンビニ利用層に本をアプローチすることで、新しい客層を取り組み始めているという。
 まあいわれてみれば、昔から百貨店の上階には必ず書店があり、そこに集まった客が階下の衣服などを購入するという例は沢山あった。ある意味、本屋には集客要素があった訳である。従来型のコンビニが雑誌類を置いているのも同様だと思う。そういう意味では雑誌だけであく、本を置く、あるいは書店とコンビニを併設一体型することで、書店利用客にコンビニ商品を購入させるということは可能だろうし、さらにいえば顧客の滞在時間やコンビニ利用客が複数の書籍を購入するということもあるのだろうと思う。
 問題点としてはやはり陳列、品揃えを以下に平準化できるかどうか。本屋としての在庫商品は多分、単価を抑えた雑誌、文庫、新書、コミック類が中心となるのだろう。さらにいえば万引き対策をどう構築するかなども必要になってくるかもしれない。
 コンビニではおそらく万引きによるロス率を一定程度見込んでいるのだろうとは思うが、それを出版物にまで応用できるのかどうか。低コストでの商品タグの構築なども検討される必要があるかもしれない。
 いずれにしろ本が売れない時代、座して死を待つようにしてどんどんと減少の一途をたどる書店にとっては、コンビニとの一体化というアプローチもあっていいかもしれないと思う部分もある。