前立腺生検術を受ける

 12時からということで予約してあった。子どもに運転を頼み11時半過ぎに泌尿器科医院に着く。子どもには後でまた迎えに来てくれるよう頼んで家に帰す。

 12時15分頃に処置室に入る。まず衣服を全部脱いで検査着に着替える。さらに紙オムツを履くように言われる。紙オムツはほとんど初めての経験である。

 次に右腕に点滴を打たれ、左には時間を置いて腕を締め付け血圧を測るバンドをはめる。そして左側を下にして検査着を大きくめくりあげられる。

 いつの間にか医師が来ていて、まず腰よりやや下の方に二箇所麻酔の注射をうつ。しばらくすると麻酔が効いてきて下半身が少し痺れたような感じになる。

 そして検査が始まる。麻酔が効いているのでさほどの違和感もなく超音波プローブが挿入される。それから検査針が刺されているらしいのだが、あまり感覚がない。ただパチンという音が何度もする。後で調べたりしたところでは、この時に組織サンプルが採取されているのだとか。

 検査自体は最初に医師からも言われていたのだが、5分程度だったようにも思う。ただしこういうのに場慣れしていない身であっても、長いなという印象はなかった。ただ、これはもう自分的には検査というよりも完全に手術という感じだった。

 それから可動式でほぼ横になれる椅子に移るように言われ、そこで長い時間水を飲みながら尿を何度か取るようにということだった。

 横になると麻酔も効いていることもあるんだろうか、少し眠ったようだった。気がつくと、看護師が今は2時ですと告げ、尿意があったら教えるようにと言ってカーテンを閉めてくれた。後は用意したペットボトルの水を飲み続ける。ただし麻酔の影響もあるのかほとんど尿意はない。

 15分くらいしてから痺れはあっても尿出るかもと思い、トイレに行きますと言うと、看護師が立たせてくれて、大きめの取っ手がついたビーカーみたいなものを持たせ、尿はすべてそこにするように指示され、歩いてトイレに行く。左手にビーカーを持ち、右手で点滴を引きずりながらトイレに行くのは我ながら、病院でよく見る患者さんそのものという感じだ。

 トイレに入っていざしてみると、これがあまり出ない。時間をかけてビーカーに三分の一くらい絞り出すようにして尿を出す。最初に血の塊みたいなのが出て、あとはかなり濃いめの血尿である。もともと血とかには強い方ではないのだが、それはなんとなくやり過ごせたのだが、それ以上に膝まで下ろした紙おむつの尻にあたる部分がけっこうな量の出血で汚れている。これがちょっとスプラッタっぽくて、まいったなという感じ。

 検査室に戻ってまた水を飲み続ける。それだけでは飽きるので、自分で持って来たリュックから本を出して読み始める。こうなるともう余裕、という訳ではないのだが、とにかく時間がかかるのだから。

 それからしばらくして、なんとなく下腹部に違和感を覚えてきたので、またトイレに行くと告げる。さっきと同様にビーカーをもたされトイレへ。今回もさほど尿意はないのだが、いざし始めると出るわ、出るわ。ほとんどビーカーいっぱいになってもまだ出続けるような感じ。もちろん赤っぽい尿である。

 さすがに並々満杯というのもなんだろうと思い、8分目くらいで検査室行の窓口にビーカーを起き、さらに尿の続きをしてから、検査室に戻る。看護師に沢山でましたと説明するが、軽く「そうですか」的に流される。4時過ぎにようやく検査着から衣服に着替えてもいいということになる。血まみれの紙オムツをどうするかと思ったが、まだ出血が続いていそうだったので、そのままにした。紙オムツのままズボンを履く。なんとなく将来の情けないイメージがフラッシュバックするような。

 衣服に着替えてからもそのまましばらく待機。5時少し前に医師の診察面談し、検査結果は一週間後と言われる。医師はエコーの結果とかも踏まえて、癌の確率は割と低いとも言ってくれたが、こればっかりは検査結果がきちんと出てみないと安心はできない。

 ただし、この先生は医大で教授をしており、前立腺癌の検査や手術は山ほどやっている、ある意味名医といっていいキャリアの持ち主のようなので、その言葉には信頼できるのではないかと思っている。少しそのキャリアとかを調べると、自分と同い年とのこと。そうか、教授職は60で定年となるので、名誉教授とかで残るか、こうして開業医となるかみたいなことなんだろうか。

 自分と同い年でこういう立派なキャリアを持っているということに普通に感心しつつ、自分も年齢的には一つのキャリアの終了みたいな年齢なんだということを改めて思ったりもした。

 医師の面談の後も会計まではさらに30分くらい待たされる。まあ医者に通うというのはただひたすら待たされるということなんだということだ。

 この泌尿器科の医院には今回で都合三回通っているのだが、とにかく患者さんが多い。大いに流行っているということだ。そして泌尿器科という診療科の特性だろうか、とにかく年寄りが多い。なので例えば朝9時という開院時でもすでに10名くらいのお年寄りが待合室にいるくらいだ。

 今回も医師の診察や会計の際に待つ間でも、待合室の椅子が足りないくらいに混んでいる。足元も覚束ないようなお年寄りが立っているのを見ると、なんか座っているのが忍びなく、席を譲ってずっと立っていたのだが、考えてみれば自分は検査(手術)終わったばかりなんだよな、そんなことを少しばかり思ってもみた。泌尿器科医院では62歳の自分はまだヒヨッコなのである。

 前回貼った画像はちょっとばかりリアルだったので、それとは別の前立腺生検術の画像を念のため貼っておく。

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 しかし医師は癌の確率は低いとは言ってくれたけど、まあ最悪のことを想定しておこうと思う。癌となればとにかく根治できるのであれば、そのために努力していこうと思う。

 まずは手術による前立腺の全摘、それ以外では放射線治療やホルモン治療など。多分、前立腺癌の治療はほとんどの場合、男性機能を失うことになるのだという。男性機能はある意味、男性としてのアイデンティティに関わる部分もないではないが、まあ62という年齢からすれば、そのへんは捨象してでも根治、生存のパーセントを増やすことに重きをおくべきなんだろうなと思う。

 とにかく子どもが勤めに出るまでは、主たる働き手である訳だし、カミさんは障害者年金が出ているとはいえ自立した生活が送れるかといえば、それはノーである訳で、自分はまだまだ生き続けていなければいけないんだろうとは思う。

 まあいろいろと考え続ける一週間になる訳だ。