前日に家事を諸々やっていたので、1日空いた。なので近場の美術館に行こうと思い、MOMASと富士美のどちらにするか一瞬迷ったが、企画展がちょっと魅力的だったので富士美に行くことにした。
ロシア絵画というと実はほとんど知らない。せいぜい大塚国際美術館で観た「見知らぬ女」のグラムスコイと「ヴォルガの舟曳き」のイリヤ・レーピンくらいか。今回はそのレーピンとアイヴァゾフスキーの大作が来るというので、ぜひ観てみたいものと思っていた。それがこの「第九の怒涛」。
美しくかつダイナミックな絵である。アイヴァゾフスキーについてはほとんど知らない。19世紀に活躍した、主に海景画を得意とした画家だという。なんとなくロマン派の流れかなとも思う。といってもドラクロワというよりはフリードリッヒみたいな感じだろうか。それを強く感じるのがやはり大画面のこの作品。
聖書を題材にしたものらしいのだが、見事としか言いようがない。岩肌にへばりついて難を逃れようとする人間たちの間で、象や熊といった動物たちも必死に水難から逃れるようとしている。その中でなぜか蛇が一匹、これがワンポイントでなんとも印象に残る。奇妙な絵柄でもある。
このアイヴァゾフスキーの「第九の怒涛」がおそらくこの企画展の目玉中の目玉なんだと思う。その他の画家では興味を引いたのはやはりレーピン、シーシキンの三人だろうか。それ以外にも興味深い、画力ある画家が目白押しなんだが、知名度、作品の完成度とかでいうとやはりこの三人になるのかもしれない。
シーシキンは写実派と分類されるようだ。ほぼバルビゾン派と同時代の人なんだが、フランスの自然主義とシンクロしているような画風である。美しい風景画である。
最後に心に残った作品の一つがこれ。ボリス・クストージエフの「朝」。印象派的な表現、なんとなくメアリー・カサットを想起させる。