神保町ブックフェスティバル

 国会の後、これも始まったばかりの神保町ブックフェスティバルに行くことにした。本の仕事をしているのに、このお祭りには実は一度も行っていない。
 このフェスティバルは確か、元々は神保町の古本屋の古本市から始まったのだと記憶している。今でも神保町の交差点前には神保町ふるほん祭りの大きな看板がある。

 これを本の街神保町をアッピールすべく、亡くなった信山社柴田信さんや三省堂の亀井社長、小学館の相賀社長等の尽力で、神保町ブックフェスティバルが始まったと何かで読んだことがある。古本だけでなく、出版社も出店し割引により謝恩セールを行う。さらには神保町の様々な店舗が、飲食店はビールや料理を屋台に出し、紙屋、CD屋なども出店し、一大フェスティバルになっている。
 人手もかなり出ていて、歩道は本当にゆっくりとしか進めない。古本を手にする者、出版社の出店でふだん書店ではお目にかかれないような本を手にする者などでごった返している。この本好きな沢山の人たちを見ていると出版不況という言葉が嘘ではないかとさえ思えてきてしまう。
 とはいえ今、紙の出版物はもう瀕死の状況にある。市場は収縮しまくっており、元々ここ20年くらい本では食えない業界は、雑誌の売上、利益でなんとか食いつないできた。それが昨年だったか、書籍と雑誌の売上が逆転した。それが何を意味するか、少なくともこの業界にそこそこの年数いる者には自明のことだ。書籍の利益率では書店や取次といった流通業者は商売にならない。かといって、長年同じ正味により利益を出してきた出版社にとって、利益配分を変えることは致命傷になる。
 今、現在の出版業界の状況はそういう崖っぷちにきている。なんとか打開策として求められているのは、流通の中抜き、出版社は書店や読者との直販を、書店もまた出版社との直取引で利益率を確保しようと動き始めている。しかし物流コストを吸収できるだけの利益を確保できるのか、それは一定の売上が要求されるのだが、その大前提となる売上がほとんど期待できない。なぜなら出版物という商品が売れないからなのだ。
 そういう状況のもと、今回も表面的には大盛況なブックフェスティバルなのだが、これが永続されるとはとても思えない、そういう崖っぷちの岐路にある。来年もあるのかどうかわからない。キャリアの終わりに近づいたからこそ出かけることができたのかもしれない自分にとっては、来年というものがあるのかどうか。
 なんだか映画のタイトルみたいな落ちになってしまうけど、本当に「俺たちに明日はない」かもしれない。