You gotta get you a woman


 ここ数日ずっと嵌っているトッド・ラングレンのポップ・ナンバーだ。
 毎日、車で通勤するのだが、時間にして実は3分程度である。以前は徒歩や自転車で通勤していたのだが、昼休みに家に帰って昼食をとり、やり残した家事を、朝干しきれなかった洗濯物を干すとか、まあそういう類のものだが、それらのためにとにかく帰る。帰る途中でクリーニング屋に寄るのも日課だ。まあ、家事全般も自分の仕事なので、これはこれで致し方ない。昼、会社を出てクリーニング屋に寄り、帰宅して昼食、家事して、また駆け足で会社に戻る。となると、短い距離でも車での移動の方が時間を短縮できる。まあそういう事情だ。
 朝の車での時間は本当に3分くらいなのだが、その時間にちょうどかかったのがこのご機嫌なナンバー「You gotta get you a woman」だ。これってトッドのデビューアルバム「RUNT」に収録されシングルカットされた曲である。全米チャートで20位に入った、ある意味トッドの最初のヒット・ナンバーだ。曲はなんというかR&Bぽい感じである。ちょうどこの頃こういう感じの曲を作っていたのは、多分ローラ・ニーロあたりかな。ピアノとギター、ドラム、パーカッション、ベースという小編成で、トッドはボーカル以外にもコラースを全部自分でやっている。ローラ・ニーロ的と思ったが、それほどブルージーな感じもしない。このコンボ感覚はどちらかというとキャロル・キング風であるかもしれない。
 ところどころの雰囲気、ギターの入り方、ピアノの感覚は、これは完全にキャロル・キングである。トッドはキャロル・キング的なものを取り入れているのかと思いきや、このアルバムは1970年である。キャロル・キングは60年代から作曲家として活躍し、シティという三人組グループで一時期活動していたが、シティ時代はこんな雰囲気ではなかった。キャロル・キングサウンドが確率するのは大ヒットしたアルバム「つづれおり」からであるが、リリースされたのは1971年。ということは多分、キャロル・キングがトッドのサウンドをどこかで聴いて取り入れたというところなのかもしれない。
 トッド・ラングレンローラ・ニーロは同じブルーアイド・ソウルの範疇に入る。二人が一緒に演奏したというような事実はなさそうだが、音楽的にはかなり近似性が高い。そのローラ・ニーロキャロル・キングの曲「up on the roof」をやっているように、割と近いところにいた。1960年代の後半から1970年初頭のポップ・ミュージックがジャズやR&Bのクラブでのライブ感覚に近いようなアレンジを取り入れた若いミュージシャンたちの新しいタイプの曲の一つみたいなくくりでいいのかもしれない。
 キャロル・キングローラ・ニーロトッド・ラングレンは、多分それぞれ同じような曲を聴き、同じ時代の空気を吸いこんでいたんだろうなと、漠然と想像する。この曲はそれまでにはあまりなかったような演奏だが、その後の70年代のある種の類型、モデルになっていったようにも思う。70年代ポップスの一類型。トッド・ラングレンの進取気鋭な才能が現れた作品といえるんじゃないかと思う。