リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンド(RINGO STARR& HIS ALL STARR BAND)


行ってきましたぜ、ZEPP TOKYOまで。リンゴのこのバンドは1889年の最初の来日以来だから20数年ぶりということになる。なんといってもビートルズのメンバーのライブはリンゴしか観てない。これが最後の来日になるのだといわれれば、そりゃ行かざるを得ないだろうというのがファンの心情である。それにしても存命なのはポールとリンゴだけである。ハァ〜と溜息の一つや二つはきたくなる。ポールもう一度来ないかなと切なく思ったりもする。
リンゴも御年72才、正直ライブできるのかという思いもある。まあとりあえず生きていて、動いているリンゴを拝むことができればそれでいいくらいの感覚である。リンゴ、別にタイコ叩かなくてもいいからねみたいなそういう心情。とりあえず最初から晩年のジャイアント馬場の試合を暖かく見守る全日ファンみたいな感覚である。たぶん私のような感覚のファンばかりではないかと思いつつ埼玉の辺境から電車に乗り継いで現地まで行きましたね。ちなみにこの日は、3時半頃に早引きしましたよ。リンゴと仕事を秤で比べれば、そりゃ圧倒的にリンゴだわね。別に親の死に目に会わなくてもリンゴとまで言わないし、もうとっくに二親死んでるけどね。
今回のライブチケットはお友だちがクリスマスプレンゼントにくれた。しかも一緒に付き合ってくれた。まあ数少ないガールフレンドの一人なんだが、30年来の付き合いだからガールじゃねえんだけどさ。とりあえずライブとかに一緒に行ってくくれる友人がいるというのは小さな幸福だとは思うわ。
さてまずオール・スターズなんだが、なんといっても最初の来日の第一期メンバーが人数、ネームバリュー、いずれも圧倒的な感じでまさにオールスターズの名に相応しかった。来日情報でそのメンバーを見たときには思わず「ウソ〜」って叫んだかもしれないくらいだった。メンバーをウィキとかに頼って書き出すとこんな感じだ。

ビリー・プレストン(キーボード)
ドクター・ジョン(キーボード)
ニルス・ロフグレン(ギター)
ジョー・ウォルシュ(ギター)
リック・ダンコ(ベース)
レヴォン・ヘルム(ドラム)
ジム・ケルトナー(ドラマー)
クラレンス・クレモンズ(サックス)

ザ・バンドから2名、ザ・バンドのラスト・ワルツ・セッションにリンゴがゲスト出演したからなのかさらにそのセンションにいたドクター・ジョンイーグルスからジョー・ウォルシュ、もう一人のビートルズビリー・プレストンにE・ストリートバンドからクラレンス・クレモンズとニルス・ロフグリンなどなど、好きなミュージシャンの揃い踏みみたいな感じだったかな。このライブは武道館だったけど、ほぼフルハウスに近かったような記憶がある。しかし気がつけばプレストンもクレモンズもバンドの二人も鬼籍に入っている。
こういうメンバーを揃えられるというのもリンゴの人脈なり人徳みたいなことが当時もよく言われた。その後もオールスターズは何度も編成されてライブツアーが行われているようで、ウィキによればそれは9期にものぼるという。今回の来日メンバーをいれると10期になるのだとか。しかし数年に渡ってドラマーとしてあのシーラ・Eも参加しているようだし、なんかグラマラス・ライフとかも当然やったりもしたんだろう(Youtubeで普通アップされていた)。
ほかのメンバーをつらつら眺めるとなんかワクワクしてくるな。クリームのジャック・ブルースヤング・ラスカルズのフェリックス・キャバリエピーター・フランプトンエリック・カルメン、おまけにデイブ・メイスンまで。みんなスマッシュ・ヒットした持ち歌があるから、それぞれのパートで盛り上がったんだろうし、たぶんみんなで大合唱だったんだろうなどと想像する。
リンゴ・スター - Wikipedia
え〜と、今回のライブについてである。メンバーやライブセットはこのサイトにある。セットは東京での2回、名古屋、大阪とすべて同じだった模様だ。
リンゴ・スター2013年日本公演 特設サイト |
まずメンバーについて。

トッド・ラングレン(ギター)
ティーブ・ルカサー(ギター)
リチャード・ペイジ(ベース)
グレッグ・ローリー(キーボード)
マーク・リベラ(サックス、パーカッション)
グレッグ・ピソネット(ドラム)

正直、きちんと知っている、聴いてきたのはスティーブ・ルカサーとトッド・ラングレンぐらいだろうか。グレッグ・ローリーは初期のサンタナのメンバーといわれてなんとなく「ア〜、ア〜」みたいな反応だろうか。でもみんな芸達者なメンバーばかりである。平均年齢は確実に60超えであるのだが、職人的な感じできっちり聴かせてくれる。
リンゴは思いの他元気である。ドラムも何曲かきちんと叩いていたし、歌もステージパフォーマンスもしっかりしていた。生きて動いていてくれさえすればなどと思っていたからある意味予想外なほどだ。ただ全体として動きがユーモラス、ひたすら両手でピースサインをやるのが、なんともユーモラスだ。これほど沢山のピースマークを見たのは始めたかも。誰かのtwitterに一生分のピースマークを見たというのがあり笑えたくらいだ。
曲のセットは以下のとおり。

1. Matchbox (Ringo Starr) *
2. It Don’t Come Easy (Ringo Starr) *
3. Wings (Ringo Starr)
4. I Saw the Light (Todd Rundgren) *
5. Evil Ways (Gregg Rolie) *
6. Rosanna (Steve Lukather) *
7. Kyrie (Richard Page)
8. Don’t Pass Me By (Ringo Starr)
9. Bang the Drum All Day (Todd Rundgren)
10. Boys (Ringo Starr) *
11. Yellow Submarine (Ringo Starr) *
12. Black Magic Woman (Gregg Rolie)
13. Honey Don’t (Ringo Starr)
14. Anthem (Ringo Starr)
15. You Are Mine (Richard Page)
16. Africa (Steve Lukather)
17. Everybody’s Everything (Gregg Rolie)
18. I Wanna Be Your Man (Ringo Starr)
19. Love Is the Answer (Todd Rundgren)
20. Broken Wings (Richard Page) *
21. Hold the Line (Steve Lukather)
22. Photograph (Ringo Starr) *
23. Act Naturally (Ringo Starr)
24. With a Little Help from My Friend */ Give Peace a Chance (Ringo Starr) *

「Matchbox」「It Don’t Come Easy」の流れでもうやられたっていう感じである。しかもちゃんとリンゴが動いて歌っている。もうそれだけですべて満足という感じだ。隣の友だちに「 Photograph」かかったらたぶん泣くと宣言しておく。
続いてそれぞれの持ち歌に入るのだが、正直トッド・ラングレンはあまりきちんと聴いたことがない。グレッグ・ローリーの「 Evil Ways」には激しく反応。もう「コレコレ」みたいな感じである。思えばこの人、初期のサンタナのキーボードだけでなくボーカルも担当していたんだっけ。そしてルカサーの「Rosanna」。これはベストヒットUSAとかをよく見ていたときの頃。80年代の栄光の日々を追想するような名曲であり大好きな曲でもある。ウラ覚えながらほとんど歌えてしまうのが笑える。そしてサビの「meet you all the way」で声張り上げる。至福の時間である。
それからリチャード・ペイジ、リンド、トッドと交互に。リンゴの歌はお馴染みのビートルズナンバーだ。そしてほぼ中間部で「 Yellow Submarine」で会場大合唱。たぶんここが第一部の最後みたいな感じだろうか。
そして怒涛の第二部的な幕開けがサンタナの大ヒットナンバー「Black Magic Woman」。もう完全に一大ナツメロ大会みたいな感じである。リンゴのビートルズ・ナンバーとそれぞれのヒット・チューンをほぼ交互にしつつ終幕はリンゴの「Photograph」。予告通りに目頭が熱くなりウルウルしてくる。さらに「 Act Naturally」、そして最後に「 With a Little Help from My Friend」でフィナーレ、もう会場上で大合唱である。アンコールはなく、ステージ袖に戻りかけたリンゴを呼び戻すように、バンドメンバーがジョンの名曲「Give Peace a Chance」を歌いだし、リンゴが戻ってさらなる大合唱。エンディング。
アンコールを期待したいところだが、みんな年だし、聴いている側も同様に年だし、立ちっ放しはつらいことおありで、それなりにどころではなく大満足だった。
ただのオールドネームによるナツメロバンドショーではないかと、たぶんその一言でかたずけられるのかもしれない。でもそこで歌うナンバーのそれぞれに、それを聴いていた自身の記憶やらなんやらが投影される。そういうものなのだ。ナツメロで何が悪い、とまあそういう軽めの居直りも含め、とにかく生きている、動くリンゴ・スターがきちんとライブ・パフォーマンスしてくれたことだけで心の底から感謝の念を抱いている。なにかそういう心持に、ようはたいへん幸福な一時を過ごせたということだ。
帰りは友人とそのまま飲みに行き、ライブの話を肴に愉しく飲んだくれた。
リンゴのパフォーマンスからすれば、なんかまだまだこのツアーいけるんじゃないかと思わないでもない。2〜3年の間に再来日してくれればいいなと思う。そのときにはたぶんもっとリンゴのパフォーマンスは減るかもしれないし、ドラムは1〜2曲になるかもしれない。でもそれでもいいと思う。生きて、動いていてくれさえすれば。
あまり信仰心はないほうなのだが、天の上の誰かさんに祈りたいと思う。ビートルズの残された二人、ポールとリンゴが長生きしますように。