『近代絵画史』

  都内で友人と会うことになっていたので、待ち合わせ場所の旭屋をうろついていたら、新書コーナーの中公新書の新刊の中にこの上下巻が平積みされている。近代絵画史の入門書としてはつとに有名な名著である。ロングセラーでもあり版を重ねていたはずだが、しばらくアマゾンでは古本扱いになっていたはずだがと思って手にとった。重版再配本かミニフェアとかその手かとも思った。
 すると表紙に増補版とありカラー版となっている。もともと1975年の発売である。絵画史の入門書だが当然図版はモノクロである。同じ著者の岩波新書のこれもロングセラーである『名画をみる眼』も図版はモノクロだが、こういうのは改版して図版はカラーにすべきだよなとずっと思い続けていた。
 そうなのだ、『近代絵画史』は今回の増補版で図版をすべてカラーにしたのだ。値段はどうかというと上巻860円、下巻840円とこのページ数の新書として、オールカラーにしたのに割安感満載である。やるな中央公論という感じだ。お堅い歴史書である『応仁の乱』がベストセラーになったことの余禄かもしれない。しかしこうやって名著、ロングセラーを読みやすく改版するというのは出版社の使命ではないかとも思う。
 絵画好きとしては今回の増補版には脱帽という感じである。上下巻購入させてもらった。ゆっくりと再読させていただく。