ダラス・バイヤーズクラブ

Dallas Buyers Club

Dallas Buyers Club

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ダラス・バイヤーズクラブ - Wikipedia
 マッチョでロデオと酒と女と薬に明け暮れる自堕落な電気技師ロン・ウッドルーフは、エイズで余命30日と宣告される。エイズは同性愛者の病気という偏見のあった時代、ロンは宣告を受け入れられずにいるが、次第に病気と向き合い病気について学んでいく。そして当時アメリカで無認可のエイズ治療薬を密輸し、低額な月額料金で会員に薬を売る「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立する。多くの会員を集めるが、国から違法な密輸業者として告発されるがめげずに国家と闘っていく。
 無学なアウトサイダーが独力で学び、大きな権力と闘い成果を出す。社会派ドラマでありながら、娯楽性も高く物語としても面白い。ドラマの進行と共に主人公も成長を遂げていく。その過程もまた面白い。周囲も荒くれでやくざな主人公にじょじょに共感を示し、彼をフォローしていく。共同経営者として彼を助けるトランスジェンダー、製薬会社と癒着する医事行政の矛盾からロンの手助けをする女医などなど。
 このドラマ立てなんとなく既視感があるなと思ったのだが、これはかって大手企業PG&Eを公害で告発し、史上最高額の和解金を勝ち取ったエリン・ブロコビッチの半生を描いたジュリア・ロバーツ主演の「エリン・ブロコビッチ」に似ている。あの映画も滅法面白く、そして圧倒的な演技力でオスカーを獲得したジュリア・ロバーツと共に忘れられない映画である。
 この「ダラス・バイヤ^ズクラブ」はまさに「エリン・ブロコビッチ」の男性版である。アウトサイダーが社会に立ち向かい勝利する。わかり易い図式だが、こういうのをアメリカは大好きなんだなと思ったりもする。こういう成功譚が、公正と正義が最後に勝つというのが、アメリカ民主主義、アメリカンドリームを支えているようにも思う。
 これが日本だとたいていの場合、告発や訴訟は負けに終わり、いつかは夜が明ける、明日を信じてみたいなところで終わるの多いから。
 監督はカナダ出身のジャン=マルク・ヴァレ。とても小気味良い演出をする。
 主演はこの映画でオスカー主演男優賞を獲得したマシュー・マコノヒーエイズ患者を演じるため、この映画のために20キロも痩せたのだとか。確かにガリガリであるが、病気であってもマッチョなヤクザ的人物の感じをうまく出している。オスカーに値する演技だとは思う。それにしてもハリウッド俳優は役柄で太ったり、痩せたりと体を張るなとはいつも関心する。
 さらに助演でトランスジェンダーを演じたジャレッド・レトが好演である。女性のカッコをし、おそらくホルモン注射も受けているだろう。そしてこれもまたエイズ患者、病院で副作用の多い治験薬の投薬を受けている。鬼気迫るような演技で、これはひょっとしてと思って調べると、この映画でオスカー助演男優賞を受賞している。ようはこの映画は主演男優賞、助演男優賞の二冠達成映画なのである。
 エイズという暗いテーマながら中々に痛快感をも与えてくれる。これは監督の演出、脚本の見事さだといえるかもしれない。これは当りも当たりの映画だと思う。