まさかの安倍、解散総選挙

安倍首相、解散の大義急造「消費増税で教育・社会保障」:朝日新聞デジタル
安倍首相、突然の「解散総選挙」 新聞各紙の報じ方を比べてみると…
 安倍首相が急遽、解散総選挙に打って出るのだとか。6月以降野党の国会を開けという声を無視し続け、ようやく今月末から国会招集となったと思いきや、その冒頭で解散という。今なら野党の選挙準備が整っていないこと、北朝鮮のミサイルにより危機を煽り、その結果として支持率が上昇していることなどが理由らしい。
 さらにいえば国会開催を逃げ続けてきたのは、首相夫人の関与が濃厚な森友学園への国有地の格安払い下げ疑惑、安倍の盟友、加計孝太郎が理事長を務める加計学園今治市獣医学部を新設する加計学園に対して、国家戦略特区により特別な便宜を計ったとされる加計学園疑惑、それらは先の国会でも野党から追求を受けており、閉幕によりなんとか逃げたという印象であった。国会を開けば再び疑惑を追求され、支持率低下に繋がる。それならば北朝鮮ミサイルにより支持率が上昇しているうちに、野党の体勢が整わないうちに解散してしまえという、まったくの勝手な都合による解散なのである。
 解散は総理大臣の専権事項だとはよくいわれる。しかしそれはまったくの政局的なかってな解釈であり、時の権力者の自己都合によって行われてきたものであり、憲法に明記されたものでもなんでもない。百歩譲って、解散が権力者の権限として有効だとしたら、政局を左右するような大きなテーマがあり、民意に訴える必要がある時だけかもしれない。あまりいい例ではないが、小泉純一郎参院郵政民営化法案が否決された時に、衆院の解散を行い郵政民営化の信を国民に問うた。ポピュリズムに長けた大衆政治家である小泉の真骨頂ではあったが、解散するに足る理由としては余りあるものがあった。
 それに対して今回の安倍の解散の理由はというと、ほとんどそれは身勝手な都合でしかない。新聞報道にも大義なき解散という文字が踊るがまさしくその通りである。後付け的に消費税を10%に上げ、その増税分を教育の無償化等の財源にするというとってつけたような理由をを持ち出している。
 しかし、前回の解散総選挙時には本来なら財政健全化のためにスケジュール化していた消費税10%を延期するということを理由に、ただそのためだけに解散をしたのである。デフレ脱却のため経済政策アベノミクスを継続していくために国民の信を問うという、なんともわかりにくいものだった。
安倍首相が解散表明・消費再増税延期、来月14日投開票 | ロイター
 「2020年度の財政健全化目標を堅持する」という公約は今回どうなっているのか。安倍の政権は、多くの場合、国民の健忘症によって維持されているのではないかとさえ思えてくる。さらにいえば、安倍は先の参院選挙の時には「アベノミクスのエンジンをふかす」という訳のわからない妄言で経済政策の継続を訴えた。しかし、異次元の金融政策によりデフレマインドを払拭し、物価を2%上昇させるインフレターゲットを設けて経済を好循環させていくという政策は、一向に成果が出ないままである。すでに6年を経て未だ道はんばと言い訳される経済政策は、客観的にみて失敗であったと断じるべきなのだが、安倍政権は国民の健忘症をいいことに、次から次へと新しい意味不明のスローガンで目くらましを行っている。
 なぜ安倍政権は高支持率を得ているのか。野党は、特に民進党が体たらくなママでいるのか。その答えはたった一つ、政権とマスコミとの癒着にある。政権に都合の悪い情報はほとんど流されず、流されてもかなりの部分が脚色され続けている。それに対して野党へのネガキャンは様々な形で行われる。テレビのニュース、ワイドショーからネット、SNSに至るまで。その尖兵となっているのはテレビを支配する大手広告代理店、電通博報堂等であることは間違いない。さらに大手新聞社も読売や産経を中心に政権の御用マスコミと化している。
 政権に対して多少とも批判的だった(あくまで多少ともである)朝日は、福島第一原発事故の報道で、東電が撤退を進めていたという記事を巡って誤報を追求され、それを境に一気に体制寄りへと変質した。東電の原発からの撤退はそういう兆候や、上層部がそういう方向に立っていたという周辺情報もあり、まったくの誤報でもなんでもなかったが、政権を中心に徹底して叩かれた。あれは本当に象徴的な事象だった。
 多分、あの事件を機にマスコミと政権の癒着は一気に進んだ。最もそれはおそらく政権交代によって生まれた民主党政権を日本の支配層、官僚組織と財界、その背後にあるアメリカのエスタブリッシュメントが心底恐れ、二度とそれを許さないために、親米自民党政権を揺るぎないものにしようとしたというのが、多分謀略論風に説き起こしかもしれない。
 それでは民主党政権の何が問題だったか。アメリカの支配層、よく言われるジャパン・ハンドラーからすれば、民主党政権は親中政権になりかねない要素が見えたのかもしれない。最初の民主党政権の二大巨頭であった首相の鳩山は、東アジアで中国、ロシア、アメリカとの間での日本の存在意義を再構築しようとしていた。それはそれまでの親米一辺倒の自民党政権とは異なる位相でもあった。さらにいえばその時民主党内で巨大勢力となっていた小沢一郎は、外交的には国連主義であり、もともと自民党田中派として中国とは極めて親和的な部分があった。
 アメリカのジャパン・ハンドラーからすれば、このままでは東アジアでの橋頭堡である日本が、また利権を含めた影響力が圧倒的に低下する可能性があった。だからマスコミや自民党を使い、徹底して民主党へのネガキャンを行った。それにより鳩山と小沢は失脚し、次の総理となった菅直人にはお世辞にも政治センスがあったとはいえない。経験不足の彼は官僚の思惑通りに動き、増税路線で選挙で大敗した。まあある種の陰謀論的にいえばそんなところだろうか。
 その辺はかなりの脚色や想像力たくましくしてる部分もある。しかし、安倍自民党政権の復帰後の権力とマスコミの癒着状況を見ると、当たらずとも遠からじという感想もある。
 そして今回の安倍解散総選挙である。明らかに安倍にとって都合の悪い、森友、加計隠しのまやかしであることははっきりしている。だとすれば、いい加減、健忘症の国民も少しは気づいてもいい頃ではないかと思う。政権復帰した時の大勝から、総選挙一回、参院選一回と二度の選挙でも自民党は大勝している。そろそろ国民のバランス感覚が出てきてもいい頃ではないのか。政権は、権力は、勝たせ過ぎると碌なことがない。そろそろ自民党にお灸を据えてもいい時ではないだろか。