装具の型取り

 練馬にある装具屋さんに行ってきた。ここは妻が病気になり、国リハに入院中に出入りしていた業者で、最初に装具を作ったところだ。入院中に最初の一つを作り、退院してしばらくして予備用にもう一つ作ってもらった。いずれも足首を固定するタイプのもので、確か健康保険の補助を使って作ったと記憶している。
 当時は本当に次から押し寄せてくる事務的な事柄を次から次と片付けつつ、退院後の妻をどう介助して行くか、介護保険の利用はなどと日々てんてこ舞いしていた。凌いで行かなくてはならないから、当然のごとく仕事もしていたし、子どもはまだ小学校の三年生くらいだったか。建てて三年くらいの家には妻と自分のそれぞれでローンを組んでいたのに、妻の収入はなくなるしで、もうどうやって行ったらいいのかと途方に暮れるかというと、そういうこともなく、とにかく次々と眼前に現れる厄介事を順繰りに片付けていくということだけだった。
 妻の装具もそんなやるべきことの一つとしてクリアして行ったように記憶している。健康保険を使ってそうした装具を作るのは、発症してすぐに脳が腫れたため、頭蓋切除手術を受けたため、頭を保護する帽子を作ったのが最初だったか。あれは網目の何かユダヤの祭司が被るようなタイプのものだったが、特殊な仕様なのか7〜8万したように記憶しているな。
 装具についても確か同じくらいだっただろうか。通常、装具の耐用年数は3〜4年ということらしいが、5年以上持ったように記憶している。留め具の部分やマジックテープが劣化してきたため、一度二足ともメンテナンスをしてもらったことがある。その時以来なので、業者の方もあまり記録が残っていないようだったが、国リハ入院中に作ってもらったことなどを電話で説明し、アポを取ってもらった。ちなみにこうした装具は役所を通じて申請すれば、障害者手帳を使って無償で作ることも可能だ。その場合は、役所で申請し、県の身障者リハビリセンターに行っていろいろと障害の状態を調べてもらったうえで作ることになる。そのためにはなんども役所や県リハに行く必要がある。
 それとは別に現在かかりつけの医師の診断書を元に健康保険で作ることも可能だ。その場合は、医師が指定する業者で作ることが条件となる。この場合は医師の指定というより、その病院に出入りしている業者ということになる。一度その手続きで作ってもらったのだが、やはり以前に作ってもらった装具屋の方が品質が上のようにも思い、今回は私費で作ることでアポを取った。
 装具の型取りはというと、足に布状の石膏を巻いていき、それを半分に割って型にする。装具を作る職人は手慣れたものでわずか30分足らずで型取りは終わった。妻は装具をつけて、4点杖をついてやっと短い距離を歩くことができる。なしでは全く自立して移動することはできない。そういう意味では必需品中の必需品だ。まだまだ先の長い人生だし、装具は定期的に作って行かなくてはならない。妻にとっては人生の一里塚みたいなものかもしれない。